アパレル業界でよく聞くキャリーとは?意味や環境問題へのつながりについても紹介
キャリーとは、アパレル業界で次のシーズンも販売されるアイテムのことです。ファッションの世界ではキャリーを始めとしたさまざまな業界用語が飛び交っているので、意味が気になっている人も多いかもしれません。そこで本記事では、アパレル業界でよく聞くキャリー品を始めとした用語の意味や、キャリー品と環境問題とのつながりを解説します。
目次
アパレル用語・キャリーの基本情報
アパレル業界で働いていない人からすると、キャリーという言葉は馴染みが薄いかもしれません。アパレルの世界では、春夏・秋冬といったシーズン(旬)を意識することが重要。まずはキャリーの意味と、キャリーの商品例を紹介します。
キャリーの意味
キャリーとは、予定していた販売期間やシーズン(旬)が過ぎたものの、引き続き販売するアイテムのことです。アパレル業界では春夏・秋冬に分かれた「シーズン」という考え方が重要で、それぞれのシーズンに合わせて新作商品が発表されたり、シーズンの終わりにはセールが開催されたりします。またキャリーはキャリー品、シーズン持ち越し商品と呼ばれることもありますよ。
キャリーの商品例
季節に関係なく売れるTシャツは、キャリー品になることが多いアイテムです。キャリー品は基本的に、次のシーズンに持ち越しても売れるかどうかを考えて決めます。Tシャツの他には、そのブランドの定番・人気アイテムもキャリー品になるのが一般的。過去の売上を見て、キャリー品を決めるブランドもあるようです。
アパレル業界におけるキャリー品の販売方法と問題点
キャリー品の類語に、「継続品」があります。シーズン関係なく、1年中販売する継続品に対し、キャリー品は一度シーズンが過ぎた商品とされ、値下げして販売するケースも見られるでしょう。ここでは、キャリー品の販売方法と問題点を解説します。
キャリー品を販売する方法は主に2つ
キャリー品を販売する方法は、プロパー(正規の価格)で売る方法と、マークダウン(値下げ)して売る方法の2つです。プロパーで売る例は、まず秋冬シーズンのアイテムとして、ブラウスを販売します。秋冬のシーズンが終盤を迎え、セールを開始しますが、セール期間中はブラウスをセールの対象外に設定。その翌年の秋冬でも定価で販売するのが、プロパーでキャリー品を売る例です。
次に、マークダウン(値下げ)で販売する例を見ていきます。秋冬のアイテムとしてコートを販売後、売れ残ってしまいました。秋冬シーズンの終わりにセールで、コートを値下げして販売します。そこでも売れなかった場合、コートを春夏シーズンでは販売しません。2回目の秋冬シーズンのセールで、コートをさらに値下げして販売するのが、マークダウンで売る例です。
在庫を抱えることが多い
アパレル業界は流行の変化が激しく、アイテムの入れ替わるサイクルが短い傾向にあります。キャリー品の問題点として、在庫の増加が挙げられるでしょう。特にキャリー品をプロパーで販売する場合、翌年のシーズンまで保管するため、在庫問題に長期間悩まされることになります。
キャリー品などを大量廃棄しないための取り組み
サスティナブルというという言葉が流行し、世界的に環境への意識が高まるとともに、アパレル業界の大量廃棄が問題視されているのが現状です。ここでは、キャリー品などを大量廃棄しないための取り組み例を紹介します。
アパレル業界の大量廃棄が社会問題に
アパレル業界では、一度も着用されていない新品のアイテムまでもが、大量廃棄されている現実があります。近年消費者の環境問題への意識は高まりを見せ、ファッションアイテムの大量廃棄が問題視されるようになりました。それを受けて、衣類を回収してリサイクルする、キャリー品や別ブランドとして販売するなど、各アパレルメーカーがさまざまな取り組みを始めています。
キャリー品をアウトレットで販売する
キャリー品をプロパーとして販売しても、マークダウンで販売しても、売れ残ることはあります。企業としては在庫を抱えたくないので、キャリー品はアウトレットなどに流すことが一般的。アウトレットでの割引き率は、アイテムやブランドによって異なりますが、3割引き~8割引きなど、定価よりもかなり値下げされることが多いでしょう。アウトレットは、消費者にとっては欲しかった商品を手に取りやすくなり、ブランドにとっては在庫問題を解決できる、双方にとって利益をもたらす存在です。
新しいブランドとして再販売する
株式会社FINEでは、服の廃棄問題に一石を投じるべく、「Rename (リネーム)」という取り組みを開始しました。Renameはブランドタグや洗濯表示タグの付け替えをし、新しいブランドとして再販売するサービス。元のブランドの価値や質を保ったまま、3~8割程度の割引きをして販売しています。Renameの取り組みは在庫の解消につながり、まだ着られる服が捨てられることを防げるでしょう。
衣服を回収して新たな洋服を作る
オーダースーツを扱っている「FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)」では、自社で販売した洋服を顧客から回収し、新たな洋服を作るサスティナブルな取り組みを実施しています。回収した服を再生(アップサイクル)生地にして、新しい服の素材にすることで、廃棄される衣類を減らし地球環境に貢献できるでしょう。
キャリー以外のアパレル用語5選
アパレル業界では、キャリーの他にもたくさんの業界用語が使用されています。あらかじめ意味を知っておくと、その言葉を見かけたとき、すぐ理解できるかもしれませんね。ここでは、知っておきたい5つのアパレル用語を解説します。
1.プロパー
プロパーとは、割引きをせずに販売するファッションアイテムのこと。プロパーはもともと「正規の」という意味で、新作や人気アイテムをプロパーにする、つまり正規の価格で売ることが一般的です。使用例として、アパレルショップでは「プロパーで販売する」という言い方をします。定価で売るプロパーに対し、値下げして売ることを指す「セール」や「バーゲン」がプロパーと対をなす単語となるでしょう。
2.マークダウン
マークダウンとは、販売開始時に設定した価格よりも、値下げして販売すること。主にシーズン終盤で行われる、セールの際に使われる言葉です。セールでは、「〇パーセントオフ」と表示されるのをよく見かけるかもしれません。「〇パーセントオフ」のパーセントは、「マークダウン率」とされています。
3.死に筋商品
死に筋(しにすじ)商品とは、お店に並べてもなかなか売れないアイテムのことです。死に筋商品は在庫になりやすいので、お店としては悩ましい存在かもしれませんね。死に筋商品の反対で、売れ行きが好調なアイテムのことを「売れ筋商品」と呼びます。
4.B品
アウトレットなどで「B品」という表示を見かけたことがあるかもしれません。B品とは「Bクラス品」や「B級品」を略した言葉で、正規で販売する品質を満たしていないアイテムのことです。例として、販売前から糸がほつれていたり、汚れていたりするアイテムが該当するでしょう。
5.継続品
継続品はキャリー品の類語で、シーズンに関係なく販売する定番アイテムのこと。キャリー品はシーズンという考え方が重要なのに対し、継続品はそれほどシーズンを意識することなく、1年中販売できるのが特徴です。
アパレル業界のキャリー品はお得に手に入ることも♡
キャリー品はマークダウンで販売されたり、アウトレットで販売されたりすることも多いので、手に取りやすいアイテムと言えるでしょう。またキャリー品を購入すれば、捨てられるはずの衣服を減らせます。環境問題を意識しながら、洋服を選んでみるのも、新しい時代のファッションの楽しみ方かもしれませんね。