21.8.2015
ロレックス維持費のコストパフォーマンス~高級時計の維持費について~
Komehyo
ブログ担当者:須川
高級時計を購入しようと考えている方であれば、「どのメーカーにしようか?」「どのモデルにしようか?」と悩む時期があると思います。その悩みはある種「楽しい悩み」だとは思います。しかし、それと同時に金額面の現実的な悩みも発生します。
つまり、「予算に収まる販売価格か?」「リセールは良いか?」「維持費は?」などと私たちは考えてしまいます。
販売価格やリセールについては購入時や売却時という刹那の問題ですが、維持費はしっかりと「理解と覚悟」をしてから購入を決めることが大切です。
今回は「高級時計の維持費」について考えると同時に、ロレックスの維持費のコストパフォーマンスについて考察したいと思います。
(ロレックスの維持費は?)
■高級時計の維持費
高級時計にとっての維持費は「故障した場合の修理費用」と「定期メンテナンス料金」のことを指しています。時計は”機械”ですので購入直後であっても故障する可能性はあります。時計が使用される状況も千差万別ですので、もし完璧に製造されたとしても故障の可能性が低くなるというだけで、故障が絶対に起こらない時計を作ることは不可能でしょう。
そこで、高級時計を所有した際には、「故障した場合の修理」についてどのようなものかイメージしておくことで、いざという時に慌てることがなくなります。更に、時計のコンディションを良い状況に保っておくと故障リスクを減らすことができますので、「定期メンテナンス」についても認識しておく必要があります。時計に故障が起こった時にまず考えることは、「保証期間内かどうか」です。購入時より一定期間はアフターサービスとして修理を無料で受けることができます。しかし、保証期間を過ぎてしまうと有償での修理になります。正規購入であればメーカー保証が付き、並行輸入品の購入であれば販売店の保証が付きますので、その保証期間の長さを把握しておくことが大切です。
定期メンテナンスは、しばしば自動車の車検に例えられます。しかし、時計の定期メンテナンスは車検とは異なり、法的に強制されているわけではなく、あくまで「自己判断で行う任意のもの」です。一般的には「3年~5年ごと」または「4年~5年ごと」に行うことが推奨されています。 修理やメンテナンスにはいろいろな種類がありますが、時計内部に行う修理・メンテナンスの主な種類は下に挙げた3つの作業です。
■時計内部の修理・メンテナンスの主な種類
①オーバーホール(分解掃除)
ムーブメントを分解し、パーツを洗浄し、注油をしながら組み立て直す作業
②タイミング調整
分解をせずに精度の調整をする作業
③電池交換
電池を新しいものに交換する作業
「電池交換」はクォーツ時計の場合ですが、機械式時計(自動巻式や手巻式)は「オーバーホール」と「タイミング調整」が主な修理・メンテナンスの種類です。「定期メンテナンス」と呼ばれるものは主にオーバーホールのことを指します。機械式時計やアナログクォーツ時計は歯車類が噛み合って動いており、その軸などには磨耗を防ぐためにオイルが注してあります。そのオイルは通常、数年で無くなってしまいますので、定期的にオイルを注油する必要があります。その作業とは、ムーブメントを分解し、パーツを洗浄し、注油をしながら組み立て直すというものです。この作業のことをオーバーホールと呼んでいます。タイミング調整とは、分解をせずに精度の調整をする作業です。つまり、機械式時計には精度調整のための装置があり、それを調整して現状よりも精度を上げる作業がタイミング調整です。ただし、この調整はオイルがまだ枯渇していないオーバーホールがまだ不要な時計に対して行うものですので、簡易修理という側面があります。
ここで、主な定期メンテナンスであるオーバーホールについて一部のメーカー料金をチェックしていきます。故障した場合の修理もオーバーホールをすることが多いので、オーバーホール料金のイメージをつかんでおくことは重要です。私がコストパフォーマンスで注目したいメーカーはロレックスです。なぜならば、ロレックスの正規オーバーホールには「仕上げ(外装研磨による傷消し)」がサービスでついていますので、コストパフォーマンスが高いことが期待できるからです。下で、他メーカーと比較しながら検証したいと思います。
サブマリーナのオーバーホール基本料金は¥45,000(税抜)
■ロレックスのオーバーホールのコストパフォーマンスは?
正規の定期メンテナンス料金はもちろんメーカーごとに異なります。例えばロレックスのサブマリーナのオーバーホール基本料金は¥45,000ですが、これは他メーカーと比べて安いのでしょうか、高いのでしょうか?これを紐解くには、「自社ムーブメントか汎用ムーブメントか」という観点と「仕上げを含むかどうか」という観点で整理する必要があります。
<正規オーバーホール基本料金(※1)>
※基本的にステンレスケースの男性用3針自動巻時計を想定して調査。
○自社ムーブメント(仕上げ含む)
・ロレックス「サブマリーナ」:45,000円
○自社ムーブメント(仕上げ含まない)
・ジャガールクルト「マスターコントロール」:72,000円
・IWC「インヂュニア オートマティック」:73,500円
・ゼニス「ヘリテージウルトラシン」:64,500円
・パネライ「ルミノール(P5000)」:53,000円
・オメガ「プラネットオーシャン」:45,000円
・カルティエ「カリブル・ドゥ・カルティエ」:60,000円
○汎用ムーブメント(仕上げ含まない)
・タグホイヤー「カレラ・キャリバー5」:45,000円
・IWC「マーク17」:56,500円
・パネライ「ルミノール」:60,500円
・ブライトリング「スーパーオーシャン」:60,000円(仕上げありは+2万円)
・オメガ「シーマスタープロフェッショナル」:45,000円
・カルティエ「サントス100」:60,000円
通常は「自社ムーブメント」の方が料金は高くなります。ただし、上の例ではパネライの料金だけ逆転現象が起こっています。そして、オメガとカルティエは自社ムーブメントでも汎用ムーブメントでも同じ料金です。これは、最近の一部のメーカーにおいての現象です。「戦略的な料金設定」が行われていると見るべきだと思いますが、汎用ムーブメントの純正パーツ供給が減少している現状も反映されているのかもしれません。 一般的には「仕上げ」はオーバーホールと別で行うメンテナンスですが、前述の通りロレックスのオーバーホールにはもれなく「仕上げ」がついてきます。これは特殊なパターンのメンテナンスメニューです。通常であれば、仕上げ料金だけでも1万円以上は掛かります。比較をすると一目瞭然ですが、ロレックスの「自社ムーブメントのオーバーホール+仕上げ」で¥45,000は非常に安いことがわかります。ちなみにですが、ロレックスに「仕上げ」なしでお願いしても料金は同じです。
■ロレックスの最高水準のアフターサービスに追随してほしい
今年、ロレックスは正規保証期間を2年→5年に変更しました。そして、今回紹介したように、ロレックスのオーバーホールは非常にコストパフォーマンスが高く、「定期メンテナンス料金」と「故障した場合の修理料金」が安いと言えます。つまり、「維持費のコストパフォーマンス」も「購入後の保証期間」も業界最高水準にあるのが現在のロレックスです。
昔の時計修理といえば、まず町の時計屋さんに見てもらい、摩耗した部品なども時計屋さんが転用や作成して修理してくれました。今は時代が変わり、純正部品か非純正部品かということに以前よりも拘る時代になっていますので、「部品交換が必要な修理」になった時点でメーカー修理になる可能性が高くなっています。そんな時代だからこそ、私も一人の消費者の立場として、メーカー修理・メンテナンスの料金が安くあってほしいと願っています。ロレックスのような良心的なメンテナンス料金のメーカーが増えていけば、時計業界の未来は明るいのではないでしょうか?
以前のエントリー(ついにロレックスも動き出した! 時計業界のアフターサービス戦争)でも紹介したように、「保証期間」というアフターサービスの分野で、各メーカーが激しい競争を繰り広げています。「保証期間」だけでなく「メンテナンス料金」というアフターサービスも時計メーカー各社が切磋琢磨し、今よりも消費者の立場に寄ったサービスになっていけば良いなと期待しています。
※追記(2018/1/9)
最近、いくつかの時計メーカーがロレックスのアフターサービスに追随し始めました。例えば、いくつかの時計メーカーでは、正規オーバーホール料金内で仕上げができるようになりました。アフターサービス面も切磋琢磨をし、これからも多くのメーカーが良い方向に進んでもらいたいです。ただし、まだまだ料金面では見直しの余地があるように感じます。今後もより良い展開を期待しています。
※1・・・エントリー作成時点(2015年8月)での調査金額。税抜きで記載。メンテナンスは一般の方も利用することがあり、公平性を考え「会員割引」などは考慮せず一般料金で記載。基本的にステンレスケースの男性用3針自動巻時計を想定して調査しています(革モデルとメタルバンドモデルで料金が異なる場合はメタルバンドの料金)。一部メーカーはオーバーホールにライトポリッシュ(簡易仕上げ)をサービスでつけますが、本格的な仕上げとは異なるため「仕上げなし」の方に整理しています。
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