4.6.2025
【復活‼︎】A. Lange & Söhne(ランゲ&ゾーネ)の魅力と新旧比較
Komehyo
1994年に復活を遂げた「A. Lange & Söhne(ランゲ&ゾーネ)」は、復活と同時に4つのモデルを発表しました。今回はその中でも、ブランドを代表するモデル「LANGE 1(ランゲ1)」について、実機を用意しご紹介いたします。
「A. Lange & Söhne」は、豊かな歴史、美しいデザイン、そして機能美に優れた時計づくりで知られるブランドです。ぜひ、この3つの魅力に注目しながらご覧ください。
【目次】
「LANGE1」のスペック紹介
はじめに今回ご紹介する「LANGE1」のスペックや特徴について、解説します。
「LANGE1」の特徴は、一般的なシンプルな三針時計とは異なり、「アウトサイズデイト(大きな日付表示)」「パワーリザーブ表示」「スモールセコンド(小秒針)」といった複数の機能がバランスよく配置されている点にあります。
スペックについては、手巻き式で3気圧防水仕様となっており、現在は「イエローゴールド」「ホワイトゴールド」「ピンクゴールド」「プラチナ」の4種類が展開されています。
一番標準的な「イエローゴールド」モデルは¥6,105,000です。(※2025年4月時点)
「LANGE1」はどんな方に支持されている?
「LANGE1」がなぜ人気なのかをご紹介する前に、ひとつご理解いただきたいことがあります。
それは――
「LANGE1」は、すべての時計愛好家から広く支持されているわけではない、という点です。
しかし、それでもなお「LANGE1」は、特に2つの層の方々から強く支持されているモデルです。
1つ目の層は、
「Patek Philippe(パテック フィリップ)」「Vacheron Constantin(ヴァシュロン・コンスタンタン)」「Audemars Piguet(オーデマ ピゲ)」など、世界三大時計ブランドをすでに所有しているハイエンドな愛好家の方々です。
そういった方が「次の1本を」と考えるとき、コレクションの幅を広げる存在として「LANGE1」が選ばれるケースが多く見られます。
2つ目の層は、
「ROLEX(ロレックス)」や「OMEGA(オメガ)」など、王道の高級時計を愛用してきた方々です。
そうした方が「自分にとって最後の1本を選ぶとしたら」と考えたときに、選択肢として「LANGE1」が浮かぶ傾向があります。
このように、「LANGE1」は“あがり時計”、つまり人生の最後に選ぶ1本として、多くの時計ファンに選ばれているモデルなのです。
「LANGE1」が人気な3つの理由
「LANGE1」の人気な理由は3つあると考えています。
それは「美しさとカッコ良さを併せ持つ」点、「歴史と背景が素晴らしい」点、「業界トップクラスの芸術性がある」点の3つです。
ここからそれぞれについて解説します。
①美しさとカッコ良さを併せ持つ
「美しさ」と「カッコよさ」――この2つの魅力を兼ね備える時計は、実はそう多くありません。「LANGE1」は、まさにその両方を高い次元で実現している数少ないモデルのひとつです。
まずは、「カッコよさ」に注目してみましょう。
文字盤には複数の機能が凝縮されていますが、通常このような複雑な機能を詰め込むと、見た目がごちゃごちゃしてしまいがちです。しかし「LANGE1」は、それらを絶妙なバランスで、芸術的にレイアウトしています。視認性を保ちつつ、機能美を損なわないデザインは見事です。
次に、「美しさ」についてです。
文字盤のインデックスには、クラシカルなローマ数字と、間に配置されたクサビ型のインデックスが組み合わされており、繊細で上品な印象を与えます。針も同様にクサビ型で統一されており、全体のデザインに調和と一貫性をもたらしています。
さらに「アウトサイズデイト」には立体的な枠が設けられ、機能性だけでなく、見た目にも洗練された美しさを感じさせます。
こうした機能やデザインの要素を見て、お気づきの方もいるかもしれませんが、それぞれが重ならず、視認性を保ったレイアウトになっているのもポイントです。これは、「黄金比」や「二等辺三角形」といった美の法則、さらには「バウハウス」の思想を取り入れた構成によるものです。
そして後ほどご紹介しますが、「LANGE1」には芸術文化が花開いたザクセン王国の美意識も深く関わっています。
この「バウハウス的機能美」と「ザクセンの芸術性」が融合することで、「美しさ」と「カッコよさ」の両立が実現したのです。
②歴史と背景が素晴らしい
【歴史】
「A. Lange & Söhne(ランゲ&ゾーネ)」は、ドイツを代表する高級時計ブランドです。その背景には、かつて存在した「ザクセン王国(現在のザクセン州)」の文化的土壌があります。
ザクセン王国は、鉱山業によって豊かな富を得ており、その資金をもとに芸術文化の発展を推進しました。各国から芸術家を招き、芸術の振興に力を入れていた国家だったのです。そうした環境の中で、時計製造の町「グラスヒュッテ」が形成されました。
この地に時計産業の基盤を築いたのが、「A. Lange & Söhne」の創業者、アドルフ・ランゲです。彼は、グラスヒュッテをドイツ時計産業の中心地へと育て上げた立役者であり、その功績からも「A. Lange & Söhne」は時計界において特別な歴史的価値を持っています。
【ブランドの復活と背景】
「A. Lange & Söhne」は1845年に創業しましたが、第2次世界大戦後、東ドイツが社会主義体制に入ったことにより、他の多くの時計ブランドとともに国有化され、「GUB(グラスヒュッテ国営時計工房)」に統合されてしまいます。その結果、ブランドとしての「A. Lange & Söhne」は一時的に姿を消しました。
しかし、1989年のベルリンの壁崩壊をきっかけに社会主義体制が終わると、ブランド復活の機運が高まります。これに動いたのが、創業者アドルフ・ランゲの曾孫であるウォルター・ランゲ氏です。
彼は当時、スイスの名門ブランド「IWC」や「JAEGER-LECOULTRE」を率いていた実業家ギュンター・ブリュームライン氏と手を組み、「A. Lange & Söhne」の復活プロジェクトを始動。こうして1994年、再びその名が時計業界に登場することとなりました。
復活後、最初に発表されたムーブメントには、「JAEGER-LECOULTRE」の「レベルソ」に搭載されていたCal.822をベースにした設計が使われています。さらに、「LANGE1」の象徴ともいえるアウトサイズデイト(日付表示)は、ドレスデンにあるゼンパー歌劇場の「5分時計」から着想を得たもの。この5分時計を設計したのは、アドルフ・ランゲとその師匠によるものであり、こうした点にも深い歴史的つながりが見て取れます。
このように「LANGE1」には、単なる時計としての魅力だけでなく、ドイツの芸術文化や歴史、ブランド復活のドラマなど、さまざまな背景が詰め込まれています。これこそが、この時計が多くの人々を惹きつける大きな理由のひとつなのです。
③業界トップクラスの芸術性
「LANGE1」のムーブメントを見れば、その芸術性の高さが一目でわかります。仕上がりの美しさは圧倒的で、細部にまで高度な技術が注ぎ込まれています。
まず注目したいのが、ムーブメントに使用されている素材です。
「LANGE1」では、「ジャーマンシルバー」と呼ばれる特別な合金が使われています。これはメッキを施さず、素材そのものの風合いを活かした仕上げが特徴で、わずかに金色がかった温かみのある銀色が独特の美しさを放ちます。加えて、表面の仕上げがダイレクトに感じられるため、職人の技術がより明確に表れる素材でもあります。
さらに注目すべき点として、ムーブメントの色彩美があります。
赤く輝くルビーの周囲には金色のゴールドシャトンがセットされ、さらにその周囲には青焼きビスが配置されています。この「赤・金・青」の美しい配色が、視覚的にも非常に華やかで、時計内部に芸術的な印象を与えています。
また、テンプ受けの部分にもご注目ください。ここには職人の手による手彫りの彫金が施されており、ムーブメントごとに微妙に異なる表情が楽しめます。加えて、クラシックな機構であるスワンネック型の緩急調整装置も搭載されており、伝統的な美しさと技術の融合が感じられます。
そして、見た目だけではないこだわりも忘れてはいけません。
「A. Lange & Söhne」のムーブメントは、**“二度組み”**という特別な工程を経て作られています。これは、まずすべての部品を一度組み立てて動作確認を行い、その後いったん分解し、最終仕上げを施してから再度組み直すという、非常に手間のかかるプロセスです。この手法により、完成度の高い精緻なムーブメントが実現されているのです。
新旧の違いについて
最後に新旧の違いについて、ご紹介します。
旧モデルの「LANGE1」には、Cal.901.0というムーブメントが搭載されていましたが、2015年以降のモデルでは新たに設計されたCal.L121.1が採用されています。
Cal.901.0については、前述の歴史の中でも触れた通り、「Jaeger-LeCoultre レベルソ」に使われていたCal.822の輪列レイアウト(歯車の配置)をベースにしており、そこにウォルター・ランゲ氏のアイデアでゼンマイをもう1つ追加。これにより、**ツインバレル(主ゼンマイ2つ)**仕様となっていました。
一方で、2015年以降に採用されたCal.L121.1では、輪列の構成や設計が大きく見直され、ムーブメント全体の実用性や安定性が大幅に向上しました。
主な変更点
① テンプ構造の変更
旧モデルでは、テンプ(振り子の役割を果たす部品)にクラシカルなチラネジ付きテンプが採用されていましたが、現行モデルではフリースプラング式に変更されました。これにより、耐衝撃性が向上し、精度の安定性も高まりました。
さらに、以前は他社製のヒゲゼンマイ(ゼンマイの一部)を使用していましたが、現行モデルでは自社開発のヒゲゼンマイに切り替えられています。これにより、品質管理や精度面での一貫性も強化されています。
② デイトジャスト機能の追加
現行モデルから、新たにデイトジャスト機能が搭載されました。
これは、日付が夜12時ちょうどに瞬時に切り替わる機能で、視認性や利便性が大きく向上しています。
③ 輪列設計の見直し
旧ムーブメント(Cal.901.0)は、元々「レベルソ」のCal.822をベースにしていたため、「LANGE1」の独自レイアウトに合わせるために無理な歯車配置がされていました。特に秒針の位置が異なっていたため、輪列を延長して対応していたのです。
しかし新ムーブメント(Cal.L121.1)では、秒針専用の歯車を正しい位置に再設計。より自然で美しい輪列構造に生まれ変わりました。
実際にムーブメントを裏側から見ると、違いがはっきりと分かります。
現行モデルでは、テンプがリューズ近くに配置されているというユニークな設計になっており、他のブランドには見られない独自の魅力となっています。ぜひ実機でご覧いただきたいポイントです。
最後に
今回は「LANGE1」の魅力と、新旧モデルの違いについてご紹介しました。
「あがり時計」として選ばれるだけあって、深い歴史や興味深い背景があることを感じていただけたと思います。
新旧モデルの違いについては、当社KOMEHYOのお取り寄せサービスをご利用いただければ、お近くの店舗で実際に両モデルを見比べてご体感いただくことも可能です。
ご興味がある方は、ぜひお近くの店舗スタッフまでお気軽にご相談ください。
今回ご紹介した時計は、以下の動画でもご説明しています。
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