28.3.2026
「資産価値」だけではない。ロイヤル オークが時計史に刻んだ「常識への挑戦」とは
Komehyo

※掲載のアイテムは、KOMEHYO独自で買取り・仕入れ・販売しているアイテムの一例です。
「ラグジュアリースポーツ(ラグスポ)」というジャンルの頂点に君臨するロイヤル オーク。 しかし、その歴史背景や、パテック フィリップ「ノーチラス」との意外な共通点まで深く知る人は多くありません。 本記事では、ロイヤル オークがなぜ「スイス時計の最高傑作」と称されるのか、その理由を3つの視点から深掘りします。さらに、最初期の「Aシリーズ」実機を用いた現物比較も実施。文字盤のタペストリーの秘密や、ライバル機との構造の違いまで、マニアックな視点でその魅力を解き明かしていきます。
【目次】
ロイヤル オークとは

はじめにロイヤル オークについて簡単にご説明します。 ロイヤル オークは1972年に登場した、オーデマ ピゲの代表作です。
今回は、ロイヤル オークの初代モデルである「Ref.5402」の実機がありますので、こちらについても後ほど詳しくご紹介します。
ロイヤル オークの魅力
ロイヤル オークと聞くと、どうしても「資産価値が高い」という点が魅力として挙げられがちですが、「資産価値が高い」ということは、それ以前に時計として素晴らしい魅力があるという証拠の裏付けにもなります。
そこでロイヤル オークの魅力ですが、大きく分けて「デザイン」「歴史」「他社との関係性」という3つの観点でお話しします。
魅力①:デザイン
八角形のベゼルデザイン

なんと言ってもロイヤル オークの魅力は「潜水士のヘルメットから着想された、八角形の個性的なデザイン」です。 このデザインは、ロイヤル オークを知っている人であれば誰でも一目で認識できる、極めてアイコニックな見た目です。
デザインの特徴を深掘り
このデザインには、多くのこだわりが詰め込まれています。

このデザインの部分をさらに深掘りします。ロイヤル オークには、いくつもの特徴的なディテールが詰め込まれています。
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八角形のベゼルデザイン
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隠さないビス
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ベゼル一体型デザインのブレスレット
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文字盤のタペストリーパターン
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裏蓋を貫通しているベゼル留め構造(サンドイッチのように留められている構造)
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超絶仕上げ(サテン仕上げとポリッシュ仕上げの巧みな使い分け)
これら6点が、ロイヤル オークを「アイコニックなデザイン」と言わしめる所以だと私は考えています。
魅力②:歴史
このロイヤル オークにはかなり多くのエピソードがあって、語りどころが満載ですので、余すことなくご紹介します。
ロイヤル オーク誕生
まずロイヤル オークが誕生したのは「1972年」で、この頃は「クォーツショック」によって機械式時計が淘汰されかけていた時代でした。
この危機に対して何か手を打たなくてはいけないと考えた当時のオーデマ ピゲCEO、ゴレイ氏は、新作発表会の前日にデザイナーのジェラルド・ジェンタ氏にこう言いました。
「明日の朝までに、防水性のある革新的なスティールウォッチをデザインして欲しい!」
常識では考えられない無茶な依頼ですが、ジェンタ氏はなんと一晩でロイヤル オークのデザインを描き上げてしまったのです。
ジェラルド・ジェンタのこだわり
こうしてロイヤル オークのデザインが完成しましたが、依頼の内容の一部をジェンタ氏は「勘違い」をしていました。
それは、防水システムそのものを革新的にして欲しいという意味だと捉えていたからです。
ジェンタ氏は裏蓋とベゼルをサンドイッチのように挟み込み、ビスを使って閉じるという、今までの防水システムとは全く違うやり方を思いつき、ロイヤル オークに反映させました。
その結果、通常の防水時計は厚みが出てしまいがちですが、ロイヤル オークはとんでもない薄さで防水性能を搭載することができたのです。

世間からの評価
オーデマ ピゲは当時から最高級の時計メーカーで、金を使用した時計がほとんどでした。
ですがロイヤル オークの登場で、「薄くてドレッシー、かつスポーティな時計」という新しい画期的なラインナップを追加することができました。
これが現代でも大人気な「ラグスポ(ラグジュアリースポーツ)」の走りと言われているので、新しいジャンルを切り拓いたという歴史は本当に素晴らしいですよね。
そして当時の世間からの評価ですが、金時計よりも手間をかけた高価なステンレス時計ということで、販売が伸びるかどうか不安視されていました。
結果として初期型の1,000番台が完売するのに1年以上かかったため、この時計が成功だったのか失敗だったのかは意見が分かれています。
しかし私は、その後にパテック フィリップから「ノーチラス」、ヴァシュロン・コンスタンタンから「222」が近いデザイン性で登場したことを考えると、やはり大成功だったのではないかと考えています。
1つのモデルでこれだけたくさん語れる時計は他にありません。歴史背景が豊かであることも、ロイヤル オークの大きな魅力ですね。
魅力③:他社との関係性
ライバルなのに兄弟機
1970年代、三大時計メーカーから似たコンセプトのモデルが相次いで誕生しました。
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1972年:オーデマ ピゲ 「ロイヤル オーク」
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1976年:パテック フィリップ 「ノーチラス」
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1977年:ヴァシュロン・コンスタンタン 「222」
これらが「兄弟機」と呼ばれる理由は、単にデザインが似ているからだけではありません。実は、使われている部品の供給元が同じだったのです。

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文字盤:スターン社
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ブレスレット:ゲイ・フレアー社
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ムーブメント:ジャガー・ルクルト社(Cal.920)
※Cal.920は、当時オーデマ ピゲ、パテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタンの3社のみに提供された特別な機械でした。 これらの超一流サプライヤーによる部品によって3つのモデルが生産されていたからこそ、兄弟機と呼ばれるようになったと考えられます。
また、同じ時代にジェンタ氏が手がけた「インヂュニア」などの時計もありますが、それらはCal.920が使われていないからか、兄弟機としては扱われていません。
伝説のムーブメント Cal.920
このジャガー・ルクルトCal.920という機械は、各社で以下のように呼ばれています。
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オーデマ ピゲ:Cal.2121
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ヴァシュロン・コンスタンタン:Cal.1120
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パテック フィリップ:Cal.28-255
このムーブメントの特徴は、非常に薄型の自動巻であるという点です。自動巻ローターの周りにレールを持つという特殊な機構となっており、今でも熱狂的なファンが多い機械です。
広がる他社への影響度
ジェンタ氏はロイヤル オークで八角形のデザインを使用し、その後ご自身で立ち上げたブランドでも八角形の時計をデザインしました。
その会社は後にブルガリに吸収されますが、デザインのDNAは「ブルガリ オクト」として今も残り続けています。 また、こうした八角形デザインは日本メーカーにも影響を与えています。
カシオのG-SHOCKには公式に関わったわけではありませんが、八角形のデザインが存在し、ファンの方々が親しみを込めて「カシオーク」と呼び始めました。

これらの事例を見ると、ロイヤル オークの影響力の大きさがよく分かりますね。
編集長が思う時計の魅力
スイス時計の最高傑作
ここからは私、編集長が思うロイヤル オークの魅力をお伝えします。 まず何がすごいのか。それは先ほども取り上げた「歴史」の部分です。
この時計は、クォーツショックに対抗するためにジェンタ氏が考案した構造もさることながら、スイスのトップメーカーが協力し合って創造した「合同の傑作」であるという点に尽きます。
当時の文字盤(スターン社)やブレスレット(ゲイ・フレアー社)はスイス屈指のメーカーでした。
クォーツショックという荒波に立ち向かうために、トップメーカーたちが集結して戦ったという背景は、非常にロマンを感じる魅力的な点だと思います。
最初期が「なぜ」特別なのか
ロイヤル オークの最初期モデルはやはり特別です。
文字盤やブレスレットのメーカーが、これほど密接にオーデマ ピゲとコラボレーションしていた時代は他にないからです。
現在、スターン社はリシュモングループへ、ゲイ・フレアー社はロレックスへと、それぞれ吸収されています。
そのため、外部からこうした一流の部品供給を受けていた時代は「最初期だけ」であり、それゆえに特別だと言われているのです。
現物比較
今回は企画のために、色々なロイヤル オークをお持ちしました。現物と比較しながらご紹介したいと思います。
ロイヤル オーク (Ref.5402)
こちらは最初期の「Aシリーズ」1,000番台以内の超希少モデルです。
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文字盤:一番網目が細かい「プチタペストリー」が特徴。6時位置の「APロゴ」は最初期モデルの証です。

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仕上げ:ベゼルとブレスレットの筋目(サテン仕上げ)が繋がって見えるよう、緻密に計算されています。

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ブレスレット:ゲイ・フレアー製を示す「GF」マークや、1972年1月製造を示す刻印が確認できます。

タペストリーパターンの比較
現行の「グランドタペストリー」や、オフショアの「メガタペストリー」と比較すると、初期のプチタペストリーの繊細さが際立ちます。


好みに合わせてサイズ感を選べるのも楽しみの一つですね。
サイズの違いについて(オフショアの進化)
ロイヤル オークの派生モデルである「ロイヤル オーク オフショア」に目を向けると、そのサイズ感の進化に驚かされます。

オフショアは、オリジナルのロイヤル オークに比べてケース径が大きくなっているだけでなく、厚みもかなり増してマッシブな印象を与えます。また、プッシュボタンやリューズガードなどに樹脂パーツやセラミックが採用されており、単一の金属色ではない多色使いの面白さも特徴的です。
この「オフショア」が登場したのは1993年のこと。
その後、2000年前後にパネライなどが「デカ厚ブーム」を巻き起こしますが、オーデマ ピゲはそのはるか前から、この力強いデザインに着手していました。

当時は「時代を先行しすぎている」と言われることもありましたが、今思えばマッシブな高級時計というジャンルを確立した先見の明があったと言わざるを得ません。ドレッシーさを極めた最初期モデルに対し、スポーティさを前面に押し出したオフショア。この振り幅の広さもまた、ロイヤル オークが長く愛される理由ですね。
ノーチラスとの違い
次に、ロイヤル オークの「兄弟機」として語られることの多い、パテック フィリップの「ノーチラス」と比較してみましょう。
ノーチラスもまた、ジェラルド・ジェンタ氏によってデザインされた歴史的名作ですが、彼はこの時計を設計する際、またしても革新的な構造を思いつきました。
ロイヤル オークが「ベゼルと裏蓋でケースを挟み込むサンドイッチ構造」を採用していたのに対し、ノーチラスは船の窓(舷窓)から着想を得た「耳」と呼ばれる左右の突起を利用した防水構造を採用しています。

この「耳」の部分でフロントケースとバックケースを噛み合わせ、横からビスで貫通させて固定することで、高い防水性を確保しているのです。垂直にビスを打ち込むロイヤル オークに対し、水平方向からアプローチしたノーチラス。同じ天才の手によるデザインでありながら、構造の美学が全く異なる点が、時計ファンを惹きつけてやまないポイントです。
オーヴァーシーズとの違い
最後に、ヴァシュロン・コンスタンタンの「オーヴァーシーズ」との比較です。

同じラグジュアリースポーツ(ラグスポ)というカテゴリーに属しながらも、その進化の過程はロイヤル オークやノーチラスとは一線を画しています。オーヴァーシーズのルーツを辿ると、ブランド創業222周年を記念して作られた伝説的モデル「222」に行き着きます。
この「222」について特筆すべきは、デザイナーがジェラルド・ジェンタ氏ではなく、ヨルグ・イゼック氏であるという点です。登場時期(1977年)を考えると、先行するロイヤル オークやノーチラスの影響を強く受けていることは間違いありませんが、マルタ十字を想起させるベゼルなど、ヴァシュロン独自のアイデンティティが随所に盛り込まれました。
その後、オーヴァーシーズへと至る過程には「フィリアス」や「333」といったモデルも存在しましたが、現代のオーヴァーシーズは「222」のDNAを最も色濃く継承した最終進化形と言えます。他2社とは異なる、格式高いドレッシーなテイストがオーヴァーシーズの大きな魅力ですね。
最後に
今回はロイヤル オークの「資産価値」だけではない、本質的な魅力についてお話ししました。 今回ご紹介した初期モデル以外にも、クロノグラフやコンビモデルなど、多彩なバリエーションが存在します。
もし「実際に腕につけてみたい!」と思われた方は、KOMEHYOの「無料お取り寄せサービス」をぜひ活用してみてください。 また、皆さんがお好きなロイヤル オークのモデルについても、ぜひコメント欄で教えてください!
最後までご覧いただきありがとうございました。
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