3.6.2026
生産終了!?GMTマスターⅡ「青 × 赤」ペプシの秘密
Komehyo
多くの時計愛好家から愛されていた「ロレックス GMTマスターⅡ」。その中でも通称“ペプシ”と呼ばれる「赤 × 青」のベゼルが、2026年に生産終了になってしまうというニュースを見かけた方も多いのではないでしょうか。
今回は、突如として生産終了が発表された「GMTマスターⅡ(ペプシ)」の歴史を振り返りつつ、その背景にあるロレックスの技術的な「秘密」をいくつかご紹介させていただきます。
ぜひ、最後までご覧ください。
GMTマスターⅡには仲間外れがいる?
唐突ですが、時計愛好家の皆さんにクイズです。
実は、ここに並んだGMTマスターⅡの中に、ステンレス以外の素材の部分で「1つだけ仲間外れ」の時計があります。それは、以下の画像の内どれでしょうか?
正解発表
先ほどのクイズの答えですが、それぞれの時計のベゼルに「ブラックライト」を当てると一発でわかります。
上記の写真を見ていただくと、「赤 × 青」のペプシモデルだけ、ブラックライトの光によって「青色」の着色が消えてしまっているのがお分かりいただけるでしょうか?
実はGMTマスターⅡの中でも、このペプシのベゼルだけは、使われているセラミックの種類(素材)が他のモデルと異なります。
今回は、こういった素材の違いも含めた、GMTマスターⅡ「ペプシ」の知られざる秘密について深掘りしていきます。
GMTマスターⅠ・Ⅱの歴史
秘密のお話をする前に、前提知識としてGMTマスターの歴史を簡単にご紹介します。
まず、GMTマスターⅡが登場する前の初代モデルに相当する「GMTマスター(Ⅰ)」が1954年に誕生しました。
GMTマスターは当時の一流航空会社「パン・アメリカン航空」との提携から開発が始まり、世界中を飛び回るパイロットが瞬時に各国の時間を把握するために作られた時計です。
最大の特徴はやはりベゼルで、「赤色」が日中(ローカルタイムの昼)、「青色」が夜間を表し、昼夜が視覚的に判別できる画期的なデザインでした。これが初期の「ペプシ」カラーとなり、その後のヴィンテージ時代には「黒単色」のベゼルもラインナップに加わります。
その後、GMTマスターはさらなる進化を遂げ、同時に3つのタイムゾーンを把握できるようになった「GMTマスターⅡ」が1982年に登場。当時はまだGMTマスターⅠとⅡが並行して販売されていました。
この時にGMTマスターⅡのファーストモデルとして登場したのが、「赤 × 黒」のカラーリングが特徴の通称“コーク”です。当時、時計ファンの間では「Ⅰといえばペプシ、Ⅱといえばコーク」と親しまれていました。
やがて1999年頃に「GMTマスターⅠ」が生産終了となると、カラーリングはすべて「GMTマスターⅡ」に統合。ステンレスモデルのメインカラーは「青 × 赤」「赤 × 黒」「黒単色」の3色展開となりました(その他にもコンビモデルの茶金などもあり)。
こうして定番としての地位を確立したGMTマスターⅡですが、5桁リファレンスの時代の終焉とともに、2007年に一度これらのカラーバリエーションは生産終了となります。
しかし、その後に登場した6桁世代のGMTマスターⅡで「セラミックベゼル」の時代へと突入。黒ベゼルや「青 × 黒(バットマン)」が追加された後、満を持して2014年にホワイトゴールドモデルで、そして2018年には待望のステンレスモデルで「青 × 赤」のペプシが復活を遂げました。やはりGMTマスターといえばこの色、といわれる圧倒的な代表作です。
最近では「黒 × 緑(レフトハンド仕様)」や、最新作の「黒 × グレー」が登場するなど、カラーバリエーションを増やしながら高い人気を獲得し続けています。
しかし、今年(2026年)に冒頭の衝撃的なニュースが発表されました。不動の代表色であった「青 × 赤」ペプシの生産終了です。
これにより、現在のステンレス製GMTマスターⅡのカラー展開は「青 × 黒」「黒 × 緑」「黒 × グレー」の3色のみとなっています。
GMTマスターⅡの秘密:ペプシ生産終了の3つの理由
今回の本題であるペプシの生産終了ですが、これにはロレックスの技術的な事情を含めた「3つの理由」があると考えられています。
理由①:製造難易度の高さと強度への不満
先ほど、クイズのパートで「ブラックライトを当てるとペプシの青色が消える」というお話をしました。なぜこのような現象が起きかというと、このベゼルに使われているセラミックが、他のカラーのベゼルとは全く異なるからです。
ペプシ以外のモデルには、ロレックスが誇る独自技術「セラクロム(ジルコニア・セラミック)」が使われています。非常に傷が入りづらく、極めて高い強度を持つのが特徴です。
しかし「青 × 赤」のペプシだけは例外で、「アルミナ系」のセラミックが使用されています。このアルミナ系は、セラクロムに比べると耐衝撃性が少し劣ってしまうという弱点があります。
ロレックスとしても強度が高いセラクロムを使いたいのですが、従来のセラクロム技術では「鮮やかな赤色」を表現することが極めて困難でした。そのため、技術的な妥協策としてアルミナ系セラミックが使われてきたという背景があります。
さらに、その着色方法も非常に特殊です。まずベゼル全体を赤色のセラミックで成形し、その上から特殊な化学処理によって半分を「青色」に変化させています。この方法は非常に手間がかかり、思い通りの色味を出すのが極めて難しいという「製造難易度の高さ」もネックになっていました。
理由②:青色の着色処理と環境への配慮
赤色のセラミックを化学的に青色へと変色させる工程において、その着色素材の中に「コバルト」という成分が使われています。
実はこのコバルト、近年では「人体や環境への悪影響」が懸念される素材として指摘されることが増えています。
製品としての安全対策は徹底されていますが、企業理念として環境負荷やリスクのある素材・工程を排除したいロレックスとしては、この着色プロセス自体を一度辞めたかったのではないかと考えられます。
理由③:「赤 × 黒」コークのベゼル復活への布石
時計ファンにとって最も注目すべきなのが、かつて人気を博した「赤 × 黒」コークの復活の噂です。
その裏付けとして、ロレックスはすでに「黒と赤のセラミック(セラクロム)を製造する技術」の特許を出願・取得しています。
さらに、最近登場した「デイトナ ルマン100周年記念モデル」のセラミックベゼルを見ると、黒色のベゼルの中に「100」という数字だけが赤色で表現されています。この赤色は後から塗った着色ではなく、セラミックそのものの色です。
つまり、ロレックスは強度の高いセラクロム素材で「赤 × 黒」を綺麗に発色させる技術をすでに確立させており、デイトナでテストを兼ねて先行導入した可能性が高いのです。「完璧なクオリティでコークが復活する目処が立ったため、製造が難しく課題の多かったペプシを終了させた」と考えると、すべての辻褄が合います。
◆ 補足:GMTマスターⅡのユニークなニックネームたち
GMTマスターは、その特徴的なベゼルのカラーリングから、海外のコレクターを中心に様々な「愛称(ニックネーム)」で呼ばれています。クスッと笑えるものからスタイリッシュなものまで、代表的なものをいくつかご紹介します。
- ペプシ:青 × 赤ベゼル(炭酸飲料のペプシのロゴマークから)
- コーク:赤 × 黒ベゼル(コカ・コーラのブランドカラーから)
- バットマン:青 × 黒ベゼル / オイスターブレス仕様(アメコミヒーローのカラーから)
- バットガール:青 × 黒ベゼル / ジュビリーブレス仕様(バットマンのブレス違いの派生形として)
- スプライト:緑 × 黒ベゼル(レフトハンドモデル。炭酸飲料のスプライトのカラーから)
- ブルース・ウェイン:黒 × グレーベゼル(バットマンの正体である主人公の名前から)
- ルートビア:茶 × 金ベゼル(アメリカの伝統的な炭酸飲料の液色や缶のデザインから)
GMTマスターⅡのまとめ
今回はGMTマスターⅡの秘密と、ペプシ生産終了の背景についてご紹介してきました。今回のお話を簡単にまとめてみます。
- GMTマスターⅡの「青 × 赤(ペプシ)」が生産終了に
- ペプシのベゼルには技術的課題があった
- 製造難易度が非常に高い
- 他のカラー(セラクロム)より耐衝撃性が少し弱い
- 着色素材の「コバルト」に環境・人体への懸念が指摘されている
- 「赤 × 黒(コーク)」復活の兆し
- ロレックスが「赤 × 黒」セラミックの製造特許を取得済み
- デイトナのルマンモデルで、その技術がすでに使われている
GMTマスターⅡの「青 × 赤」ペプシは、2018年の登場初期(マーク1)と、その後のモデル(マーク2、マーク3)では、ベゼルの色の濃さが全く違います。この色の変遷を見ても、ロレックスがいかに現場で悪戦苦闘し、改良を重ねてきたかが伝わってきます。
代表色であるペプシの生産終了は大変寂しいニュースですが、その裏で「コーク復活」という新しい技術革新の可能性が見えているのは、これからのロレックスへの期待を大いに膨らませてくれますね。
KOMEHYOでは、ロレックスの最新現行モデルから過去のヴィンテージモデルまで、今回生産終了となったモデルも含めて幅広く取り揃えております。
気になるモデルがございましたら、最大3点までお近くの店舗にお取り寄せして実物をご覧いただける無料サービスもございますので、ぜひお気軽にご利用ください。
また、今回の内容はYouTube動画でも詳しくご紹介しています。実際のブラックライトでの色の変化や時計の質感を動画で確認したい方は、ぜひ合わせてご覧ください!
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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