パイナップル繊維の服は通気性◎夏にぴったりなエコ素材で快適に過ごそう
環境問題への意識の向上に伴い、パイナップル繊維をはじめ、エコ素材の需要が高まっています。パイナップル繊維とは、パイナップルの葉からつくられた素材のこと。涼しくて着心地にも優れたパイナップル繊維の衣類は暑い夏に特におすすめです。そんなパイナップル素材の特徴や環境へのメリットなどを具体的に見ていきましょう。
目次
パイナップル繊維とは
エコ素材として注目されるパイナップル繊維とはどのようなものなのでしょうか。パイナップル繊維の特徴や歴史、種類を紹介します。
フィリピンのパイナップルの葉で作った素材
パイナップル繊維は、リネンなどと同じ葉脈繊維に属する麻の仲間で、廃棄部分である葉が原料のエコ素材です。アパレル業界で積極的に取り入れられるようになったのはここ数年のことですが、パイナップル繊維の布はフィリピンで16世紀から作られています。
高い吸水性・撥水性を持つ
吸水性や発散性がリネンよりも高いパイナップル繊維は、さらっとした肌触りが特徴です。フィリピンなどの常夏の地域では年中重宝される他、日本では夏におすすめの素材として衣類や小物などに用いられています。
パイナップル繊維の種類
パイナップル繊維が原料の素材にはどのようなものがあるのでしょうか。フィリピンの伝統的な布から日本で開発された布まで、パイナップルを原料とした布の種類と特徴を解説します。
1.伝統布 「Pina(ピーニャ)」
フィリピン中部のパナイ島では、16世紀よりパイナップルの繊維で「Pina(ピーニャ)」という、羽衣のように薄い布が作られています。
「Pina(ピーニャ)」の製法は非常に繊細です。収穫した葉を叩き、しごいて葉脈繊維を取り出し、川で洗って天日干ししたものを糸として紡ぎます。これほどの手間暇をかけても、デリケートな素材ゆえにわずか25%しか織り機にかけられません。蜘蛛の糸にも例えられ、熟練の織り手でも1メートルの布を織るのに3日かかる貴重な素材なのです。
2.ビーガンレザー「Piñatex(ピニャテックス)」
カバンや靴、ジャケットなどに使用される動物の皮革の代替品として用いられるビーガンレザー「Piñatex(ピニャテックス)」もパイナップルの葉の繊維が原料です。革産業で15年働いてきたスペイン人女性カルメン・ヒホサさんが、フィリピンで古来からパイナップルの捨てられる葉っぱや茎の繊維から袋や布などが作られていることに目をつけ、この素材を開発しました。
3.日本製パイナップル布「鳳梨布 」
パイナップル繊維で作った素材には日本製のものもあります。「鳳梨布(ほうりふ)」はフィリピン原産のパイナップルの葉を輸入して、紡績から製品化までの工程をすべて日本国内で行ったものです。絹のような独特の光沢と清涼感のある柔らかな手触りが特徴で、SILKGRASS(絹のガラス)とも呼ばれます。
パイナップル繊維の魅力
現代社会において、これまで以上にパイナップル繊維のニーズが高まっている理由を考察していきましょう。
環境にも人にも優しい素材
パイナップル繊維の原料は葉の部分です。パイナップルの廃棄素材を原料にしている点で環境に優しい素材だと言えます。また、パイナップル繊維には動物のレザーや石油を使う合皮の代わりに用いられるものもあり、環境にも動物にも優しい素材なのです。さらに、パイナップル繊維の製造によってフィリピンのパイナップル農家の第2の収入源が生まれるというメリットもあります。
時代のニーズにマッチしている
新型コロナウイルスの大流行で私達の価値観は大きく変化しました。服選びひとつにしても、社会や経済の向上につながる商品が求められる傾向にあります。そんな中、避けて通れない環境問題に対応できる素材として、パイナップル繊維の需要が高まりつつあるのです。
また、社会や環境に関する問題意識だけでなく、個人の暮らしへの意識も高まっています。幸せについて考え直し、改めて限りある資源を大切にしようとする動きに伴い、個人の所有物も量より質を求める傾向にあります。エコで上質なパイナップル繊維はそんな時代のニーズにもマッチした素材だと言えます。
パイナップル繊維の服
日本で販売されているパイナップル繊維の服はどんなものなのでしょうか?商品の特徴の他、購入できる場所も合わせてお届けします。
エディー・バウアーの半袖無地プルオーバーシャツ
2014年に発売して話題になったエディー・バウアーの半袖無地プルオーバーシャツは、パイナップルリーフの繊維を織り込んで作られています。パイナップル繊維の特質を活かし、水分の吸収や通気性に優れた素材に仕上がっているので、夏にもってこいです。柔らかくなめらかな着心地が特徴で、一枚でも着られますが、前開きなのでTシャツなどと重ねてさらりと羽織るのもおすすめ。
購入可能な場所
パイナップル繊維が織り込まれたプルオーバーシャツは、エディー・バウアー各店舗とオンラインショップで取り扱っていましたが、現在は販売終了しています。ネットオークション・フリマサイト・中古衣料専門店で探すしかなさそうです。今後発売されるパイナップル素材の衣類に期待しましょう。
パイナップル繊維以外のエコ素材5選
環境汚染や資源の問題が深刻化する昨今のアパレル業界。石油系繊維に代わるエコ素材として、パイナップル繊維以外にもさまざまな素材が取り入れられています。アパレル業界が注目するエコ素材5つを具体的に見ていきましょう。
1.バナナ
バナナもエコ素材に活用されています。パイナップルと同じように、廃棄される葉や茎を利用して作られます。食用として実を収穫したあとの廃棄物を利用するため環境にも優しいのが特長です。
バナナが原料の繊維は、天然の竹繊維に似ていますが、バナナ繊維のほうがよりきめ細かく強度が強く、耐久性に優れています。軽やかで湿気にも強く、ロープやマット、紙の製造まで幅広い素材に使われます。
2.麻
麻は少ない水で栽培できる枯れにくく育てやすい植物です。農薬や合成肥料、除草剤のの必要がないのも麻の魅力。天然繊維の麻は弾力性があり扱いやすく、耐久性や抗菌性にも優れた優秀な素材で、暑い夏でもサラッとした着心地が維持できます。
ただし、麻はドラッグの大麻の原料でもあるので、西洋では昔から栽培が取り締まられており、思うように普及しないのが難点。そういった規制が少ない中国が世界の麻の生産量の50%以上を占めているのが現状です。
3.イラクサ
多年生植物の一種イラクサは、成長が早く麻と同様に非常に栽培しやすい植物です。水も農薬も少なくて済む上、麻とは違って西洋でも合法的に栽培ができます。収穫して茎をよく乾燥させ、トゲを取り除く工程を経て、繊維作りが行われます。繊維を分離してから葉の付着物を除去し、繊維を紡糸し乾燥させればイラクサの繊維の完成です。
最新の紡糸技術とイラクサのハイブリッド品種を用いることで、丈夫で柔軟性がある繊維を製造できます。加工された生地は多目的に使用でき、冬は暖かく夏は涼しい素材なので、年中使えるのもこの素材の良いところです。
4.コーヒー豆
コーヒー豆のカスを使ったコーヒー繊維も、廃棄物を資源にしたエコ素材です。台湾の繊維会社がコーヒーの豆カスとポリマーを組み合わせ、特許取得済みの製造法を用いて作り上げました。
コーヒー繊維はスポーツウェアから家庭用品までさまざまな製品に使用できます。コーヒー本来の、臭いを吸収して消臭する天然の消臭剤としての働きがエコ素材にも生かされており、コーヒー繊維のスポーツウェアは汗をかいても臭いが気になりにくいと好評です。
5.蓮
蓮の茎を使った蓮繊維も注目のエコ素材のひとつです。蓮の茎を切り開き、中から長く薄い繊維を取り出し洗浄して、干して乾燥させたものを紡糸します。
蓮繊維は柔らかく、シルクやリネンのような高級感があり、通気性が良いのが特徴です。タイやミャンマーでは昔から、特別な服を作る際に蓮繊維を使用してきましたが、加工プロセスが複雑なためあまり流通していません。それでも優れた品質には定評があり、多くの企業が新素材として注目しています。
エコなパイナップル繊維の服は夏におすすめ
地球環境に優しいエコ素材はいくつかありますが、通気性抜群で着心地の良いパイナップル素材の衣類は夏におすすめです。まだ販売されている商品は限られていますが、環境問題への意識の高まりとともに今後益々増えていくはずです。パイナップル繊維をはじめとしたエコ素材で、環境問題に配慮しながらおしゃれを楽しみたいものですね。