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4.7.2025

クォーツとは?機械式の腕時計との違いやメリットデメリットを徹底解説

Komehyo

「クォーツ式ってそもそも何?」


そんな素朴な疑問を持つ方に向けて、当記事ではクォーツ式腕時計の仕組みや特徴をわかりやすく解説します。

機械式時計との違いや、それぞれのメリット・デメリット、さらにクォーツ式の歴史や寿命を延ばすコツまで、時計選びや愛用するうえで役立つ情報をまとめています。

 

これから腕時計を購入する方や、クォーツ式と機械式で迷っている方にも参考になる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

クォーツ式時計とは?

クォーツ式時計とは、水晶振動子(クォーツ)の性質を利用して時間を刻む時計です。一般的には「電池で動く時計」として広く知られており、内部の水晶が1秒間に32,768回振動する安定したリズムをもとに、高精度な時刻表示が可能になります。精度が高く価格も比較的手頃なことから、現在もっとも普及している腕時計です。

 

構造がシンプルなためメンテナンスが容易で、実用性やファッション性を備えたモデルが多く展開されています。クォーツ式は、精度や利便性を重視する「実用性派」に支持されるタイプであり、日常の道具としての完成度が非常に高いのが特徴です

 

一方で、時計を「道具」として使うか、「工芸品」として味わうかという価値観の違いから、クォーツと機械式にこだわる声は今なお時計業界に根強く存在します。

 

クォーツ式時計の歴史

クォーツ式時計の歴史は、1969年にセイコーが世界初の市販クォーツ腕時計「アストロン」を発表したことで始まりました。それまで主流だった機械式に対し、電池と電子回路によって非常に高精度な時刻表示が可能となったこの技術は、時計業界に革命をもたらしました。この革新は「クォーツショック」(Quartz Crisis)と呼ばれ、スイスを中心とした機械式時計メーカーに大きな影響を与えたとされています。以後、クォーツ時計はコストと精度の両立により急速に普及し、現在も世界中で広く使用されています。

 

基本原理をアメリカの研究者マリソンが考案

クォーツ式時計の基本原理を初めて提案したのは、アメリカの物理学者ウォーレン・マリソン(Warren A. Marrison)です。1927年、彼はベル研究所において、水晶振動子が一定の周波数で安定した振動を保つ性質に着目し、クォーツ式時計の原理を利用した初の計時装置を開発しました。

この技術は当初、通信分野や科学測定のための高精度な計時に用いられていましたが、後にセイコーなどによって小型化・実用化が進められ、腕時計へと応用されていきました。マリソンの発明は、現在のクォーツ時計の礎を築いたと言えます。

 

東京オリンピックはクォーツ式が採用された史上初のオリンピック

1964年の東京オリンピックでは、セイコーが公式計時を担当し、史上初めてクォーツ式の計時機器が公式に採用された大会です。セイコーは「クリスタルクロノメーター」と呼ばれる高精度なクォーツ式タイマーを開発し、1/100秒単位での正確な計時を可能にしました。

 

この実績は、クォーツ技術の信頼性と将来性を世界に示す画期的な出来事であり、後の1970年代のクォーツ時計普及にも大きな影響を与えました。東京オリンピックでの成功は、セイコーが世界的な時計ブランドとして躍進する転機となったとも言われています。さらに、この大会での正確なタイム計測は、スポーツ競技における公平性と透明性を高めることにも貢献し、クォーツ技術が社会に与える意義の大きさを改めて示す機会となりました。

 

世界初のクォーツ腕時計「セイコー クォーツ アストロン」が誕生

1969年12月、セイコーは世界初の市販クォーツ腕時計「セイコー クォーツ アストロン 35SQ」を発売しました。この時計は、電池を動力源とし、水晶振動子による高精度な時刻制御を搭載した革新的なモデルで、月差±5秒以内という当時としては驚異的な精度を誇っていました。

 

価格は当時の大卒初任給の約10倍(45万円)という高額で、まさに「未来の時計」として登場したアストロンは、従来の機械式時計では成し得なかった性能と構造を実現し、時計業界に衝撃を与えました。

 

このモデルの登場は、後の「クォーツショック」の引き金となり、スイスなどの機械式時計メーカーに多大な影響を及ぼしたことでも知られています。 現在も、セイコーはアストロンシリーズを継続的に展開しており、最先端のGPSソーラー技術を搭載するなど、進化を続けています。

 

クォーツの技術はさらに進化

クォーツ時計は1969年の登場以来、半世紀以上にわたって進化を続けてきました。近年では、単なる正確な時刻表示にとどまらず、太陽光で駆動するソーラー式クォーツ時計や、電波受信による時刻自動修正機能を備えたモデルなどが登場しています。

 

セイコーの「アストロンGPSソーラー」はその代表例で、世界中どこにいてもGPS衛星からの信号を受信し、自動で現地時刻に修正される技術を搭載しています。また、シチズンの「エコ・ドライブ」(CITIZEN)は、室内光でも充電可能な高効率ソーラー技術を採用し、電池交換不要で長期間使用できる点が評価されています。

さらに、クォーツ時計の中でも年差クォーツと呼ばれる超高精度モデルも注目を集めています。これは、年にわずか数秒しか誤差が出ないという驚異的な精度を誇るもので、その代表格がグランドセイコーの9Fクォーツムーブメントです。9Fシリーズでは、温度補正機能や瞬時カレンダー切り替え、高トルクモーターなど、従来のクォーツ時計の常識を覆す高性能設計が採用されています。

 

これらの進化により、クォーツ時計は単なる「正確な時計」から、環境配慮・利便性・高精度・グローバル対応といった多機能化を遂げているのです。今後はスマートウォッチとの融合など新たな展開も期待されています。

 

クォーツ式腕時計のメリット

クォーツ式腕時計は、高精度・低価格・メンテナンス性の良さなどが大きな特徴です。電池を動力源とし、水晶振動子の安定したリズムによって時間を刻むため、正確な時刻表示が可能です。さらに、機械式に比べて構造がシンプルで壊れにくく、メンテナンスの手間も少ないため、日常使いに最適と言えます。手頃な価格帯から選べるのも魅力で、実用性を重視する人に広く支持されています。以下、クォーツ式腕時計のメリットを詳しく解説していきます。

 

メリット①:機械式に比べて高精度で時間を示してくれる

クォーツ式腕時計の最大の利点は、その高い精度にあります。水晶振動子が1秒間に32,768回という安定した周波数で振動するため、誤差は月差±15秒前後に抑えられます。

一方、機械式時計は日差±10〜30秒が一般的であり、長期間使用する場合はどうしても誤差が蓄積されやすくなります。クォーツ式は時刻修正の頻度が少なく、忙しい日常でも気にせず使えるのが魅力です。正確な時刻表示を求める方にとって、クォーツ式は信頼性の高い選択肢といえるでしょう。ビジネスシーンや旅行先、試験会場など、「時間の正確さ」が求められる場面でも安心して使えます。

 

メリット②:比較的丈夫で衝撃に強い

クォーツ式腕時計は、構造がシンプルなため耐久性にも優れています。機械式時計は内部に複雑な歯車やゼンマイがあり、外部からの衝撃に弱い傾向がありますが、クォーツ式は電気的な動作が中心で可動部品が少なく、振動や衝撃に強いのが特徴です。

さらに、外気温の変化や姿勢の違いによる影響も受けにくく、安定した性能を発揮します。たとえば、アウトドアやスポーツシーンでも安心して使えるため、G-SHOCKなどタフネスモデルの多くにもクォーツ式が採用されています。登山やキャンプ、ジムでのトレーニングなど、動きの多い環境でも安心感があり、普段使いはもちろん、アクティブなライフスタイルを送る方にも適しています。

 

メリット③:幅広い価格帯の選択肢

クォーツ式腕時計は、エントリーモデルから高級ブランドモデルまで、非常に幅広い価格帯が用意されているのが魅力です。製造コストが機械式よりも抑えやすいため、数千円から手に入るモデルも多く、学生や時計初心者にも手が届きやすい選択肢となっています。

また、ビジネス用やカジュアル用など、目的に応じたモデル展開も豊富です。一方で、グランドセイコーやカルティエ、オメガなど一部高級ブランドでもクォーツムーブメント搭載モデルが存在し,、上質な素材や洗練されたデザインにこだわったモデルも多く展開されています。価格帯の幅広さにより、自分の予算やライフスタイル、ファッションの好みに合わせて選びやすく、コストパフォーマンスに優れた時計を探している方にもおすすめです。

 

メリット④:小型・軽量なデザインが可能

クォーツ式時計は、ムーブメント自体が非常に小型で、複雑な歯車や機構を必要としないため、ケースのサイズや厚みを抑えた軽量でスリムなデザインが可能です。これにより、スーツやシャツの袖口にも引っかかりにくく、長時間の装着でも負担を感じにくいというメリットがあります。特に、細身の腕にフィットするコンパクトなサイズ感を求める方や、華奢で上品なデザインを好む女性にも高く評価されています。

また、薄型設計の自由度が高いため、モダンでスタイリッシュなファッションウォッチとしての展開も豊富です。近年では、シンプルかつミニマルなデザインを取り入れたモデルも多く、アクセサリー感覚で楽しめる点もクォーツ式ならではの魅力と言えるでしょう。

 

クォーツ式時計の3つのデメリット

高精度・低価格・扱いやすさと多くの利点を持つクォーツ式時計ですが、長期的な視点では注意すべき点もあります。代表的なデメリットは、

 

  1. 1.電子部品の寿命や修理部品の供給終了リスク
  2. 2.機械式と比べて歴史的・文化的価値がつきにくい点
  3. 3.資産価値が安定しづらい点

 

以上の3つです。

実用品としては優秀でも、将来的な保有価値や愛好家市場での評価は機械式に比べて控えめとされています。ここでは、これらのデメリットについて詳しく解説していきます。

 

デメリット①:電子部品の寿命・供給終了リスク
クォーツ式時計の内部には、ICチップやコイル、水晶振動子などの電子部品が使用されています。これらの部品は経年劣化や湿気・温度変化の影響を受けやすく、一般的に20〜30年ほどで故障リスクが高まるとされています。特に1980〜90年代のクォーツモデルでは、メーカーがすでに部品の製造・供給を終了しているケースも多く、修理不可能=買い替えを迫られることがあります。

一方で、機械式時計は歯車やネジといった機械構造のみで構成されており、部品の作り直しや職人の手によって、何十年、場合によっては100年単位で使い続けることも可能です。長期使用や世代を超えた継承を前提に考える場合、クォーツは実用性に優れる反面、寿命のある「使い切り型」であることを理解しておく必要があります。

 

デメリット②:歴史的・文化的価値が付きにくい

時計愛好家やコレクターの間では、ゼンマイ式や手巻き式の機械式時計が「伝統工芸」や「職人技術の結晶」として高く評価される傾向にあります。これは単なる時間を測る道具という枠を超え、機械そのものの美しさや、熟練した職人による手作業の価値が重視されているためです。

これに対し、クォーツ式時計は大量生産が可能であり、個体ごとの希少性や物語性が生まれにくいという側面があります。たとえば、スイスの高級ブランドではムーブメントの仕上げやパーツの構造美が芸術品として扱われることもあり、一本一本に込められた技術や歴史が価値の源泉とされています。クォーツ式にも高精度でデザイン性に優れたモデルは多く存在しますが、文化的・芸術的な価値という観点では、どうしても機械式に一歩譲ると言えるでしょう。長い時間を共に過ごす相棒としてのストーリー性を重視する方にとっては、機械式の魅力は特別なものとされています。

 

デメリット③:資産価値が安定しない

クォーツ式時計は、基本的に「使うための道具」としての価値が中心であり、資産としての価値は不安定です。多くのモデルは新品購入後、年数が経過するにつれて価値が大きく下がり、中古市場でも価格がつかないケースが珍しくありません。特に量産モデルでは、希少性が低いため資産としての価値が維持されにくい傾向があります。

一方で、機械式時計はブランドの歴史や限定生産、ヴィンテージとしての希少性などが評価され、機械式時計はブランドの歴史や限定生産、ヴィンテージとしての希少性が評価され、中古市場で定価以上の価格がつくこともあります。もちろん、ロレックスのオイスタークォーツのように、一部の希少モデルでは高値で取引される例もありますが、それはあくまで例外です。将来的に価値が残る「資産」として時計を選ぶのであれば、クォーツ式は不向きという見方が一般的です。

 

まとめ

クォーツ式腕時計は、精度の高さや扱いやすさ、コストパフォーマンスの良さから、日常使いに最適な時計として幅広い層に支持されています。電池で動くためメンテナンスの手間も少なく、ビジネスシーンからカジュアルまで、さまざまなライフスタイルにフィットする点も魅力です。

一方で、電子部品の寿命や資産価値の低さといったデメリットも存在し、機械式時計とは異なる価値観が求められる場面もあります。長く受け継ぐ「相棒」を求める方には、機械式が向いているかもしれません。

大切なのは、「時計に何を求めるか」というご自身の目的を明確にすること。正確さや手軽さを重視する方には、クォーツ式は非常に有力な選択肢です。この記事が、あなたにぴったりの1本と出会うためのヒントになれば幸いです。

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