サーキュラーエコノミーとは?ファッション業界における循環型経済の取り組みとは
ファッション業界でも話題の「サーキュラーエコノミー」とは、廃棄物を捨てるのではなく、資源として循環させる経済の仕組みのこと。EU諸国から広まり、循環型経済と訳されて近年日本でも耳にする機会が増えてきました。この記事では、サーキュラーエコノミーについて、またファッション業界における取り組みや私達にできることを紹介します。
目次
サーキュラーエコノミーとは
サーキュラーエコノミーとは、循環型経済と訳され日本でも浸透しつつある経済システムです。英語でも日本語でも難しそうなイメージの用語ですが、私達との生活に結びつきのある大変身近なものです。具体的な意味や役割を紹介します。
サーキュラーエコノミーの意味
サーキュラーエコノミーについて知る前に理解しておきたいのが、従来の経済システムであるリニア(直線)型経済です。リニア型経済はTake(資源を採る)、Make(作る)、Waste(捨てる)で成り立っており、TakeかWasteまでの一直線のシステムが特徴です。
一方のサーキュラーエコノミー(循環型経済)は、一直線のシステムではありません。捨てられていたものを資源として利用し、耐久性に優れた素材に改良して新たな商品を生み出します。それによって廃棄をゼロに近づけ、常に循環可能な状態を保つことができるのです。
サーキュラーエコノミーの役割
サーキュラーエコノミーは、環境汚染や地球温暖化などの環境問題の悪化が懸念されている中、2015年にEUが提唱して世界基準で推し進めている経済システムです。サーキュラーエコノミーの一番の役割は、環境への負荷を減らしながらも経済活動を促進できること。
サーキュラーエコノミーのシステムは、持続可能な社会環境保ちながら、約4.5兆ドルもの市場規模に成長する見込みが立っています。現状のリニア(直線)型の経済システムは持続可能ではありません。これを続けていくと、近い将来資源も途絶えしまうのは明らかですから、環境負荷を減らしつつ経済活動を促進できるサーキュラーエコノミーがこれからの社会には必要不可欠なのです。
3Rとの違い
従来からある、再利用がメインのReuse Economy(リユース経済)と混同しがちですが、これらは別物です。リユース経済はReduce(減らす)、Reuse(再利用)、Recycle(リサイクル)のいわゆる3Rのシステムで成り立っています。リユース経済では不要になったものを必要に応じてセカンドユースに回し、その後寿命がきたら廃棄するが基本です。
一方でサーキュラーエコノミーにおいては、原料の調達や製品を設計する時点で、廃棄をゼロを目指して再利用しやすい商品作りに取り組みます。回収したあとに廃棄ではなく循環させられるよう、解体しやすいデザインを取り入れているのもサーキュラーエコノミーの特徴です。
ファッション業界におけるサーキュラーエコノミーの必要性
ファッション業界ではサーキュラーエコノミーの実現が急務とされます。なぜならファッションアイテムを生み出したり維持したりする上での地球環境への負担が、計り知れないから。
専門家によると、ファッション業界は2050年までに世界の炭素収支の4分の1もの量を使い果たすと予想されいるのに、毎年推定5,000億ドルもの衣服が利用されず無駄になっているとのこと。廃棄量も凄まじく、1秒につき布地の埋め立てや焼却処分の量がゴミ収集車1台分に上るのだとか。
さらに衣類を維持することでも環境への負担がかかります。衣服を洗うことで、年間50万トンものプラスチックマイクロファイバーが海に。これは500億本を超えるペットボトルに相当する量です。
これだけ課題が山積しているのがファッション業界の現状です。サーキュラーエコノミーに切り替えないと資源は尽き、環境破壊が進み、地球は人間が生きていけない場所になる可能性もあるのです。
サーキュラーエコノミーに取り組むファッションブランド
ファッション業界でのサーキュラーエコノミーの重要性を理解して、いち早く実現に向けた活動に取り組むファッションブランドを紹介します。
マッドジーンズ
オランダのMUD Jeans社のサーキュラージーンズ「マッドジーンズ」が話題に。レンタルサービスでサーキュラーエコノミーを実現しています。
初回登録(登録料約3,500円)をして、定額(月約800円)を払うことでジーンズをレンタルできます。1年間のレンタル期間終了後、新品のジーンズと交換するか、履いていたものを買い取るかを選択可能。
返却されたジーンズは、元の素材のコットンに戻されます。そこに新たなコットンを混ぜ合わせ、再び新しいジーンズとして生まれ変わり、再度レンタルへ。また、MUD Jeansのブランド名も、革製ラベルではなく生地に直接印刷するなど、再利用を想定した作りがなされています。
ステラ・マッカートニー
循環型ファッションに取り組む代表ブランドとして有名なステラ・マッカートニー。オーガニックコットンやECONYL糸という使用済みナイロンを、新品さながらの素材に生まれ変わらせたエコな素材を商品作りに使用しています。さらに、繊維の調達先の森林は持続可能に管理されているところしか選ばないというポリシーを持っているブランドです。
ベサニー・ウィリアムズ
ベサニー・ウィリアムズでは、リサイクル業者からテント用の布の廃棄素材を買い付け、環境負荷の低いオーガニックの布地を作って商品製造に利用しています。また商品そのものを持続可能な品質に替えるだけでなく、社会性に配慮した生産を重要視するのも同社の特徴。これまで、ホームレスシェルターや薬物リハビリ施設の人々と協働し、新たな雇用を生み出しています。
スパイバー
スパイバーは、ブリュード・プロテインという環境に優しい繊維を開発しました。ブリュード・プロテインは微生物発酵プロセスを利用した植物由来の繊維で、糸・布・ファー・レザーなどさまざまなマテリアルに姿を変えます。主原料が石油ではないので、環境を害するマイクロプラスチックを生み出さないのが特徴。2021年に量産の開始が予定されています。
ブリング
日本環境設計株式会社が展開する企業「BRING(ブリング)」では、2020年5月からBRINGウェブサイト上でサーキュラーエコノミーへの取り組みを開始しました。
BRINGのサイトで商品を購入すると、商品とともに衣類をリサイクルに出すための封筒が到着。その後、服が不要になった時点で封筒に入れポストに投函すれば、日本環境設計のリサイクル工場へと送られます。ポリエステル繊維はポリエステル樹脂にされ、「BRING Material」として糸や生地に加工された後、新たな製品作りに活用。また、他の素材も同様にリサイクル原料になります。他社を頼ることなく、これらの工程を同一ブランドで行うことは世界でも珍しい例です。
サーキュラーエコノミーに関して私達ができること
持続可能なサーキュラーエコノミーを促進させるために、私達にできることはどんなことがあるのでしょうか。
廃棄物を減らす努力をする
廃棄の過程が入るとサーキュラーエコノミーは成立しません。衣類に限らず、廃棄物を減らすことが大切です。食材の有効活用や、なるべくロスを出さないレシピを考えることで、サーキュラーエコノミーに貢献できます。
サーキュラーエコノミーを視野に入れた商品の購入
ファッション業界のサーキュラーエコノミーを支援するためには、それに関わる商品を購入することと、正しくリサイクルに回すことが大切です。せっかく再利用時のことを考え作られた商品も、適切な方法でリサイクルされないと廃棄物と同じ。作られたシステムを有効に活用しましょう。
まずはファッションから。サーキュラーエコノミーに取り組もう
これからの世の中に必要不可欠なサーキュラーエコノミー。ファッション業界でも今後より多くの企業が賛同することでしょう。私達の身近なところでも、それぞれがサーキュラーエコノミーを促進に繋げる意識を持つことが大切です。