衣料品廃棄の現状からひも解く!洋服の買い方と手放し方
近年問題視されているアパレル業界の廃棄問題。この記事では、衣料品廃棄の現状について解説します。あわせて、廃棄を減らす取り組みをしている企業やその取り組み内容、個人で取り組める地球環境に配慮した衣料品の買い方や手放し方をお届けします。
目次
- 衣料品廃棄の現状
- 日本国内の衣料品の廃棄量
- 新品の服もたくさん捨てられている
- アパレル業界が大量の衣料品を廃棄する理由
- 倉庫のスペース確保のため
- ブランド価値を下げないため
- ファストファッションが出現したため
- 衣料品廃棄が及ぼす環境への悪影響
- 焼却処分時の二酸化炭素排出で環境問題が悪化
- 製造や運搬の過程でも環境に負担がかかる
- 衣料品廃棄の削減に取り組む企業
- アディダス
- バーバリー
- ユニクロ・ジーユー
- パタゴニア
- 衣料品廃棄を減らすために個人ができること
- 状態の良い服はリユース
- 状態の悪い服はリサイクル
- 安さより質を求めてアイテムを選ぶ
- リユースショップや古着屋で洋服を買う
- 衣料品廃棄問題解決に向け、自分にできることから取り組もう
衣料品廃棄の現状
衣料品の大量破棄が近年大きな問題になっています。まずは、膨大な量の衣料品が廃棄されている現状と、その理由に迫ります。
日本国内の衣料品の廃棄量
日本のアパレル業界から廃棄される衣類は、年間100万トンと言われています。枚数に換算すると実に33億着に相当する膨大な量です。
新品の服もたくさん捨てられている
現在の日本のアパレル市場では、年間13億点の消費に対して供給される衣服は27億点近くと倍以上。中には1度も売り場に出ず廃棄されてしまうものも多くあります。バブル崩壊後、アパレル市場の規模は縮小しているのに、供給量は増える一方です。個人が購入したものの、着ないまま捨てられるものもあるため、新品の衣料品処分量は計り知れません。
アパレル業界が大量の衣料品を廃棄する理由
新品やほぼ使用感のないものなど、本来捨てる必要のない服がたくさん捨てられているアパレル廃棄の現状。どうしてそんなことが起きるのか、その要因となるアパレル業界の仕組みを解説します。
倉庫のスペース確保のため
新品の服を処分するとコストがかかりそうですが、在庫になって余った服は倉庫スペースを圧迫します。保管するのにも費用がかかり、処分してしまった方が低コストなのです。倉庫のスペースを確保するために、余った服は未使用のままでも捨てられてしまいます。
ブランド価値を下げないため
余った在庫を処理する方法として、値下げしたり転売したりすることが考えられますが、ハイブランドを中心とした多くのブランドが値下げや転売にはうしろ向きです。なぜなら値下げや転売は「ブランド価値が下がる」という考え方が根強いからです。ブランド価値が下がると商品価値も落ちて作り手への給料を保証できなくなるため、売り叩けないというのが現状なのです。
ファストファッションが出現したため
ファストファッションの出現で衣類が安く買えるようになりました。いわゆるプチプラ商品と呼ばれるものですが、プチプラ商品を提供するためには製作コストを下げる必要があり、商品が大量に生産されます。また、消費者側は流行りの洋服をたくさん買えるようになった反面、安いことを理由に廃棄へのハードルも下がっているため、処分の量が増えてしまっているのが現状です。
衣料品廃棄が及ぼす環境への悪影響
衣料品廃棄は環境への負担が甚大です。廃棄段階はもちろんのこと、必要とされず廃棄されることになる衣類の製造や運搬も地球環境に負荷がかかっています。慰労品廃棄によって、具体的にどのような悪影響がもたらされているのでしょうか。
焼却処分時の二酸化炭素排出で環境問題が悪化
衣類の廃棄の手段は基本的に焼却処分です。焼却処分時には大量の二酸化炭素が発生します。二酸化炭素の増加は地球温暖化などの環境問題を加速させる原因になります。
製造や運搬の過程でも環境に負担がかかる
焼却の段階に行くまでにも環境への負担がかかっています。衣類の約9割以上を中国などから輸入しており、その輸送過程でも環境に負荷をかける二酸化炭素を大量に排出しています。
衣料品廃棄の削減に取り組む企業
深刻化する衣類品廃棄による環境破壊の問題に、多くの企業が取り組みを始めています。この分野で実績のある代表的な企業とその取り組み内容を紹介します。
アディダス
アディダスでは、衣料品廃棄を減らすために「テイクバックプログラム」という取り組みを行っています。日本国内にある14つの直営店舗に設置のコレクターズボックスで衣類を回収し、リユース品とリサイクル品に分類。リサイクルにおいては、ポリエステル繊維をケミカルリサイクルで新たな糸にしたり、セルロース繊維をバイオ燃料にしたり、その他の繊維は断熱材などにして有効活用します。
バーバリー
ブランドの価値を保つという理由で2017年に自社の売れ残り商品を2860万ポンド(約41億8000万円)分、廃棄処分していたことが明るみになったバーバリー。ブランドイメージに傷がつきかねない状況に陥り、挽回策を提案。その内容が、大量廃棄をやめると共に自社がこれまで取り組んできたリサイクル活動をさらに活性化させることでした。以前に増して売れ残り商品の再利用や修理、寄付、リサイクルに力を入れている他、廃棄しても負担が小さい持続可能な新素材の研究開発も進めています。
ユニクロ・ジーユー
ユニクロとジーユーで販売した商品を対象に、回収ボックスでリサイクルとリユースを促進しています。リユースできるものは、難民キャンプや被災地への緊急災害支援など世界中の服を必要としている人達に届けます。リユースできない服は、燃料やリサイクル素材として活用。衣料支援先に良い状態で届けるため、洗濯済みで持参するよう利用者に協力を呼びかけています。一般の衣料品には特典はないものの、ダウン商品のリサイクル(レジで回収)のみ1000円クーポンが配布されます。
パタゴニア
アウトドアアパレルメーカーのパタゴニアでは、ホームページや各メディアで服を捨てる前に今一度見直すよう呼びかけています。また、同社が打ち出すWornWearプログラムではiFixitとのパートナーシップの元、パタゴニア製品の修理方法をレクチャー。衣類を安易に処分せずに少しでも長く使うことを消費者に推奨しています。その他、2016年に開催されたブラックフライデーの売上を環境団体に全額寄付するなど、環境保全に積極的に取り組んでいます。
衣料品廃棄を減らすために個人ができること
衣料品廃棄を減らすために私達が個人でできることもあります。地球に優しい衣料品の処分方法を心がける他、衣類品の購入方法の見直しも有効です。
状態の良い服はリユース
人は服の9割を処分すると言われています。サイズが合わない、好みに合わない、流行りに合わないなど、手放す理由はさまざまですが、まだ着られるならリユースがおすすめです。
必要な人に譲る、リユースショップで売る、フリーマーケットに出す、オークションサイトや販売サイトに出品するなど、さまざまなリユース方法があります。住んでいる自治体によっては衣類の回収日があり、まだ使える衣料品を貧しい国に援助していることも。このように選択肢は複数あるので、自分に合う方法でリユースしましょう。
状態の悪い服はリサイクル
状態が良くなくリユースに向かない服や、引き取り手がいない衣類はリサイクルに回しましょう。リサイクルすれば衣類が繊維の状態に戻り再度衣類の原料になったり、断熱材などの他の用途に使われる物もあり、ゴミとしての焼却処分を回避できます。
安さより質を求めてアイテムを選ぶ
安さを服を選ぶ基準にしている人は、選び方を見直すことも有効です。安く手に入れた商品は、大切に長く使う商品にならない可能性が高く早い段階で廃棄品候補になってしまいます。そのため、流行りに左右されない長く愛用できる高品質な洋服選びを意識してみると、長く使えて廃棄率も下がります。また、衣料品削減に取り組む企業の商品を買うこともそのブランドの活動の支援につながり、ひいては環境保全に間接的ながら貢献できます。
リユースショップや古着屋で洋服を買う
新しく服が欲しいときは、リユースショップや古着屋、フリマアプリ等を利用するのも個人でできることの1つです。新品よりリーズナブルに購入できますし、流行に流されないアイテムが手に入り、人と被らないおしゃれができます。リユースショップや古着屋の商品は代わりがきかない一点物がほとんどなので、大切に着て洋服の廃棄を減らすことにもつながります。
衣料品廃棄問題解決に向け、自分にできることから取り組もう
衣料品の廃棄問題が深刻な現在、有名ブランドを筆頭にアパレル業界の取り組みも盛んになっていますが、まだまだ解決への道のりは長そうです。地球環境を守るためには、個人の心がけも大切。まずは自分にできることをやって廃棄問題への対策に取り組みましょう。