海水塩に含まれるマイクロプラスチックとは?人体への影響や削減への取り組みも
海水塩に含まれることが問題視されているマイクロプラスチックとは、プラスチックのかけらのこと。いったん海の中に入ったマイクロプラスチックを除去する方法はなく、海洋生物や環境に大きな影響をもたらしています。この記事では、マイクロプラスチック問題に対する日本や世界各国での取り組みや、私達個人にできることを紹介します。
目次
マイクロプラスチックとは
マイクロプラスチックとは、その名の通り微小なプラスチックを意味します。マイクロプラスチックの実態と環境被害の現状を解説します。
深刻化する海のプラスチックゴミ問題のひとつ
マイクロプラスチックが問題視される背景には、深刻化する海のプラスチック問題があります。海に流出するプラスチックゴミの量は世界中で年間800万トンにのぼると言われており、その量は2050年には魚の重量を超えるとの試算が出ています。さらに、世界の食塩の9割にマイクロプラスチックが含まれているという驚きの研究結果も。海洋プラスチックゴミ問題によって、漁業で年間3.6億ドル、観光業にいたっては6.2億ドルもの大きな損失が出ているのが現状です。
海に流出した直径5mm以下のプラスチック粒子
マイクロプラスチックの定義は、直径5mm以下のプラスチック粒子であること。プラスチックが劣化してできた破片やマイクロビーズなどからマイクロプラスチックは生まれます。ペットボトルなどのプラスチックゴミが川から海に渡り細かく砕かれたもので、海水中の有害な化学物質などを吸着しています。粒子が微小なため魚や海鳥などが餌と間違えて食べてしまい、食物連鎖により海洋生態系に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
マイクロプラスチックの種類
マイクロプラスチックは、「一次マイクロプラスチック」と「二次プラスチック」に分類されます。
「一次マイクロプラスチック」とは、マイクロサイズで製造されたプラスチックが排水などに混じって自然界に流れ出たプラスチックゴミです。一度流出してしまうと自然環境のもとでは回収できず、対策が難しいのが実情。洗顔料や歯磨き粉などに入っているスクラブなどがそれに当たります。
「二次マイクロプラスチック」は、ペットボトルやビニール袋などのプラスチックが紫外線や衝撃、衝突などにより粉砕されて微小なサイズになったものです。
マイクロプラスチックがもたらす問題
はたしてマイクロプラスチックにはどのような問題点があるのでしょうか。自然環境への悪影響、人の体への害に分けてお届けします。
海の生き物への影響
マイクロプラスチックは、海で暮らす生物の体内に一度入ると、排出されることなく体内に蓄積される可能性があります。餌と間違えた場合、当然栄養は取り込めませんし、消化できないため内臓に負担をかけます。腸閉塞を起こし死に至ってしまった例も。また、化学汚染物質を吸着する性質があるので、餌と間違えると有害物質を体内に取り込むことになります。海産物であれば捕獲量にも関わってくるため、海産業にダメージをもたらすという点では人間にも悪影響を与えています。
人体への影響
マイクロプラスチックの人への健康被害については、調査・研究が始まったばかりでまだ明確な研究結果は出ていませんが、悪影響の可能性は否定できません。2018年に韓国の研究者グループと環境保護団体の合同チームの研究で、世界の食塩ブランドの9割のサンプルからマイクロプラスチックが見つかっています。皮肉なことに、日頃から塩を摂取する私達は、自分達が海に流したプラスチックをマイクロプラスチックという形で摂取しているのです。マイクロプラスチックは化学汚染物質を吸着しているので、人体に影響を及ぼすことも大いに考えられます。
マイクロプラスチックを減らす各国の取り組み
マイクロプラスチックは世界中の人にとって身近な問題です。マイクロプラスチックを減らすための世界各国での取り組みを紹介します。さらに私達一人ひとりにできる取り組みについても解説します。
日本での取り組み
日本政府の取り組みの主軸となるのは、「第4次循環型社会形成推進基本計画」と「海洋プラスチックゴミ対策アクションプラン」の二つです。
「第4次循環型社会形成推進基本計画」は政循環型社会を作り上げるための施策で、第4次として新たに3つの項目が追加されました。3つの項目のひとつである「ライフサイクル全体での徹底的な資源循環」には、不要なプラスチックを生み出さないことでプラスチックゴミを抑える狙いがあります。別の項目の「適正な処理の更なる推進と環境再生」には、海洋ゴミへの対策が盛り込まれています。
「海洋プラスチックゴミ対策アクションプラン」も政府による政策です。プラスチックの有効利用を前提としながらも、海洋汚染を生み出さないための取り組みを徹底していくためのプランで、ポイ捨てや不法投棄をやめることで海洋流出を防ぎます。既に流出したプラスチックゴミの回収に取り組む他、海に流れ出ても環境負荷が少ない素材を開発するなど、環境へ配慮した素材への転換を推進する取り組みも行っています。
世界での取り組み
マイクロプラスチックに対しては世界各国でも対策が取られており、日本より早い段階で動いている国も多いのが現状です。
例えば、2015年6月にはG7によるエルマウ・サミットの首脳宣言でマイクロプラスチック問題が取り上げられています。翌月の7月には、ハワイ州でアメリカ初のレジ袋全面廃止を実行という、いち早い対策を皮切りに欧米角国で同様の取り組みが進みました。
海洋プラスチックゴミの量が2017年まで世界トップだった中国も、プラスチックゴミの輸入停止を表明しています。さらに2019年末までに国内資源で代替可能な固体廃棄物の輸入を段階的に廃止し、2016年に月60万トン輸入していた廃プラスチックを、2018年には月3万トンまで減らすという実績を残しています。
私達一人ひとりにできるマイクロプラスチック対策
私達が個人レベルでできるマイクロプラスチック対策には、大きく分けて二種類あります。マイクロプラスチックを生み出さないための対策と、摂取しないための対策です。それぞれを具体的に見ていきましょう。
プラスチックゴミを出さない工夫をする
マイクロプラスチックは、日常で使っているプラスチック類からが生み出されます。マイバックやタンブラーなどを持参すれば、レジ袋や使い捨て食器などのプラスチック製品を削減でき、タッパーやふた付きの容器などに食品を保存すれば、ラップの使用も減らせます。外出中に出たプラスチックゴミも必ず持ち帰り、廃棄の際にはきちんと分別して再利用に回しましょう。
海や川のゴミ拾いをする
マイクロプラスチックは海に流れ出たプラスチックの破片なので、ゴミ拾いで食い止められるものも多いです。川や海に落ちているプラスチックゴミは、そのまま放っておくといずれマイクロプラスチックになるので、それを阻止することは有益です。川岸や海岸は無限にあるので、マイクロプラスチック削減のためには一人でも多くの人の行動が欠かせません。
マイクロプラスチック不検出の塩を選ぶ
問題の根本的な解決にはなりませんが、個人がマイクロプラスチックを含まない塩を取り入れるのもひとつの手立てです。9割の塩にマイクロプラスチックが含まれると言われていますが、残留検査でマイクロプラスチック不検出の塩があります。生活クラブ(生協)の真塩や海水塩がその一例です。こういったものを取り入れて意識を高めながら、プラスチックゴミ自体を減らす取り組みを並行してできるとベストですね。
マイクロプラスチックの現状を知り、改善に取り組もう
マイクロプラスチック問題は研究中の分野であり、人体への被害などはっきりしていないこともあるのが現状。それでも海の生き物への実害は明白で、人体への悪影響の可能性も高いため、対策が急がれています。現代におけるマイクロプラスチック問題を把握した上で、私達個人でできることに取り組みましょう。