【潜入レポ!後編】日本最大級!「第3回 サステナブル ファッション EXPO[秋]」に行ってきました
今回は、2023年10月10日(火)~12日(木)東京ビッグサイトで行われた、第3回 サステナブル ファッション EXPO[秋]に、KOMERUの副編集長が潜入レポート。後編は日本初上陸のブランドや、イタリア発のアレを使ったヴィーガンレザーブランドなど、さらにワールドワイドに視野が広がる話題のブースをレポートします。
目次
今回レポートするのは……
副編集長 五郎部 怜(以下、五郎部)
ちょうどこの日は編集長が大型新店のオープン(KOMEHYO SHIBUYA)で多忙のため、副編集長の五郎部のみで担当。一人ということもあり、いつもよりも緊張しながら各企業のリアルに切り込みます!
そもそも、サステナブルファッションEXPOってなに?
サステナブル関連の商品が世界&全国から集結する日本最大の展示会!
#エコ、#リサイクル、#アニマルフリー、#エシカル、#オーガニック、#フェアトレードなど、みなさんも一度は聞いたことのあるキーワードがあるはず。このようなサステナブル関連の、ファッション製品・素材が世界中から集結する日本最大の専門展がこの「サステナブル ファッション EXPO」なんです。
【潜入レポ!前編】はこちらから
【潜入レポ!前編】日本最大級!「第3回 サステナブル ファッション EXPO[秋]」に行ってきました 今回は、2023年10月10日(火)~12日(木)東京ビッグサイトで行われた、第3回 サステナブル ファッション EXPO[秋]に、KOMERUの副編集長が潜入レポート。日本初出展のブランドや、○○を使った素材など、幅広い角度からサステナブルファッションの“最新”がわかるイベントの模様をダイジェストでお届けします。
Report04:今注目のサステナブル素材!廃棄りんごをレザーに変えた「APPLESKIN」
五郎部:
このリンゴはもしや、最近話題のヴィーガンレザーでしょうか?!ちょっと気になるので早速入ってみましょう。
お話を聞いたのは、イタリア「MABEL」社の「APPLESKIN」を担当する、Take Trade 代表取締役 竹内敦史さん
五郎部:
こちらはどのような取り組みをされているんでしょう?
竹内さん:
動物の皮を使わず、廃棄されるリンゴの芯や搾りかすを使って作った「アップルレザー」を取り扱っています。
ここにある「APPLESKIN」は2010年に開発を始めて、2014年に製品化した、比較的歴史のあるヴィーガンレザーブランドなんですよ。
五郎部:
そんな前からアップルレザーがあったんですね!
原料にリンゴを使っているということは、リンゴの香りは……あれ?全然しませんね。手触りも普通のレザーとほとんど変わらないです!
竹内さん:
そうなんです、リンゴからできているとはいえ、加工がされているので、においも質感もリンゴ感はないんです。
作り方としては搾りかすなどの原料を乾燥させ、パウダー状にして、樹脂に混ぜ込むことでレザーにするんです。
五郎部:
乾燥して粉状にした状態だと、この時点でリンゴと全然分からなくなりますね。香りもないです。
特ににおいもなく、リンゴ感がないアップルレザーの材料となる粉
五郎部:
そもそも、なぜアップルレザーが生まれたんでしょうか?
竹内さん:
原料は主にイタリア産なのですが、イタリアって人口は日本の半分ながら、日本の5倍くらいリンゴを消費する国なんです。その分、リンゴを使った食料品が多く生産され、膨大な産業廃棄物が出てしまいます。年間数万トン以上のリンゴが廃棄され、異臭の原因にもなっていたそう。
この廃棄されていたリンゴをどうにかしてアップサイクルできないか?と考えたところから、レザーにするアイデアが生まれました。
五郎部:
イタリアってそんなにリンゴ文化だったんですね!知らなかった……。
五郎部:
アップルレザーならではのよさって何でしょうか?
竹内さん:
まずサステナブルな視点で言うと、本来であれば捨てられてしまうはずだったリンゴを原料に使っているため、食品廃棄物の削減につながること。従来のヴィーガンレザーよりも石油由来の原料の使用を抑えているため、より環境に配慮して作れる点ですね。
また、プロダクト自体も触ってみるとわかると思いますが、手触りはまるで本物のレザーと変わりません。むしろ従来の合成皮革よりも色褪せがしにくく通気性にも優れています。その上、軽くて伸縮性あり扱いやすく、水や汚れに強いという合皮の特徴があるので、日常使いしやすいんです。
五郎部:
サステナブルなのに、おしゃれで使いやすいって最高ですね。
竹内さん:
色彩も豊かで、本革を思わせるソフトで軽くさらっとした手触りも特徴なんですよ。
五郎部:
それは今後いろいろと幅広い展開が期待できそうです!
竹内さん:
そうですね。特に「APPLESKIN」は素材の質感や色味にこだわり、高品質なアップルレザーを厳選して展開しています。既に欧米ではフォルクスワーゲン社の車用シートや、カルティエやトムフォードなどのハイブランドのプロダクトにも採用されているんです。
色彩も豊かなアップルレザー。欧米各国では世界でも一歩進んでヴィーガンレザーの活用が盛んだそうです。
五郎部:
今後の目標などがあれば教えてください。
竹内さん:
欧米各国に比べ、日本ではサステナブルや環境問題に興味を持つ人が増えてきたのは割と最近の話。だからこそ、アップルレザーのような素材の可能性はまだまだ未知数です。
リンゴからできているということで、比較的興味を持ってもらいやすいですし、軽くて水にも強いため日常使いもしやすい。今後は、様々な業界とコミュニケーションを取り、ファッションアイテムだけではなく、幅広く使っていただけるよう可能性を広げていきたいと思っています。
五郎部:
今後いろいろなシーンでアップルレザーを発見することになりそうですね。楽しみです!
アップルレザーの軽さを生かしたプロダクトと美味しそうなリンゴに囲まれる五郎部。特にバッグはちょっとしたお出かけや通勤など、日常使いにぴったり!ほしいものリストに追加したいアイテム。
Report05:デザインの力で、古紙をカラフルなアクセサリーに変える「Kami-so」
五郎部:
わぁ!すごく可愛いアクセサリーがたくさん並んでるブースがあります!これは行きましょう!
お話を聞いたのは
Nadia Siriannniさん(写真中央)、Nathan Murphyさん(写真右)
五郎部:
こちらではどんな取り組みをしているんでしょうか?
Nadiaさん:
リサイクルペーパーを使った、サステナブルなジュエリーを作っているオーストラリア・メルボルン発のブランドになります。
Nathanさん:
私たちの作品はすべてハンドメイドしているので、1つ1つデザインが全部違うんですよ。
五郎部:
確かにこんなにたくさんあるのに、全部色や柄が違いますね!それぞれカラフルで全部可愛い……。
今回はオーストラリアからいらしたんですか?
Nadiaさん:
実は今回初めて日本で展開することになったので、そのPRのために来日したんです。
五郎部:
初出展なんですね!ちょっと気になったんですけど、ブランド名の「Kami-so」って日本の「紙」っていう意味なんでしょうか?
Nathanさん:
はい!実は元々、日本の紙工芸や折り紙などのペーパークラフトが好きで、そこからインスピレーションを得たのがネーミングの理由です。アクセサリーのデザインもすべて紙を重ねて作っているものなので、「紙」の「層」で「Kami-so」と名付けました。
五郎部:
なんか海外で、日本語を使ったブランドがあるのって嬉しいです。
五郎部:
そもそも、なぜ紙からジュエリーを生み出そうと思ったんでしょうか?
Nathanさん:
私は元々グリーティングカードのデザイナーだったんですが、いろいろな大きさやデザインのカードを作る上で、どうしても廃棄する紙が出てきてしまいます。特にクリスマスカードだと、ツリー型などにしようとすると、廃棄になる部分が多いんです。だから、この無駄をどうにかできないかなと思ったのが最初のきっかけですね。
Nadiaさん:
ある日彼が急に「いらなくなった紙でアクセサリーを作る!」と言い出したので、その時は何言ってんだろ……って思いましたけどね(笑)。
五郎部:
急に言われるとびっくりしますよね(笑)。でもそこからこのジュエリーが誕生したんですね。
ちなみに紙のアクセサリーの良さってどんなところなんでしょうか?
Nadiaさん:
やっぱり紙製ということで超軽量なことは大きなポイント。1日中ノンストレスでつけていられます。
Nathanさん:
再生紙を重ねて、オリジナルのアートを施して作っているので、同じものは1つとしてないのもポイントですね。自分だけの特別な1つになると思います。
Nadiaさん:
長くずっと楽しんでいただけるよう、重ねづけしてデザインや色の組み合わせが自由に変えられたり、反転させたりできるような仕様にしたのもポイントですね。
五郎部:
環境に優しいサステナブルなアイテムでありながら、アートのようなユニークさもあってバリエーションも楽しめるのがいいですね!
今後はどのような展開をされる予定ですか?
Nathanさん:
まずはできるだけたくさんの人に知ってもらい、Kami-soのアクセサリーを楽しんでもらうこと。そしてプロダクトもアクセサリーに限らず新しいものを考えていければと思っています。
五郎部:
他の展開も楽しみです!今後の広がりにも期待しています。
デザインや色が本当に可愛くてついショッピング気分になる五郎部。英語のインタビューはドキドキするので、今後グローバルに取材していくためにも、英語をもう少し頑張ろうと決意!
Report06:サステナブルでビジュアルも美しい「パールイデア」のマネキン
五郎部:
マネキンがたくさん並んでいます。これは一体……何なのでしょうか?KOMEHYO店舗でもマネキンは必須アイテムで気になりますので、お話を聞いてみましょう。
お話をお聞きしたのは、株式会社パールイデア 企画開発部 部長/トップアートディレクター 片桐康浩さん
五郎部:
マネキンがたくさんあって気になったのですが、こちらはどのような取り組みをされてるんでしょうか?
片桐さん:
私たちは、商業施設やイベント、オフィスやショールームなどの空間プロデュースを行っている会社です。特徴としては、弊社の3R(リユース・リデュース・リサイクル)の取組み。長年サステナブルな空間づくりやエコなアイテムの研究・開発を行っているため、環境に配慮した提案ができるのが強みですね。
五郎部:
店舗デザインの際、見た目のビジュアル面だけでなく、環境配慮にまでこだわれるのがいいですね!
軽くて強い再生カーボンを使用した次世代型のリサイクルマネキンだそう。
五郎部:
いろいろなプロダクトがありますが、特にこのマネキンが美しいです!
片桐さん:
これは廃棄されたペットボトルをよみがえらせてできたマネキンなんですよ。まず、使用済みのペットボトルを回収して粉砕。ペレット状にし、再生綿→再生フェルトの過程を経て、このボディを作ることに成功しました。
五郎部:
光の当たり具合がすごくきれいですよね。こっちの小さいサイズのものも美しい!
片桐さん:
これもペットボトルの再生素材で作ったアクセサリーツールなんです。ファッションジュエリーや雑貨のディスプレーにはピッタリです。
五郎部:
もしやこれも……。
片桐さん:
そうですね。こちらはペットボトルではなく、再生紙を活用したトルソーになります。紙の切れ端を原料としているため、使用後には土中で分解するのも環境にやさしいですし、レンタルも可能です。
五郎部:
こっちには、サステナブルなハンガーも!しかも材料が全部違う……!
片桐さん:
プラスチックで作られたハンガーは、そのまま家庭で使われることも多く、最終的にはプラスチックごみとして処分されることがほとんど。そうなってしまうと自然分解されないため、マイクロプラスチックとして残り続け、海洋汚染の原因になってしまいます。
五郎部:
お店では、洋服を美しい状態で維持するのに欠かせないアイテムですが、やはり脱プラスチックの観点が必要ですよね。
片桐さん:
そうですね、最近は特に環境への意識が高まってきたこともあり、必要性が増してきたと感じています。
五郎部:
紙製とは思えない見た目や素材感ですね。普通のハンガーとほぼ変わらない気がします。ジャケットやコートなど、重さがあるアウターでも全然耐えられそう。
片桐さん:
こちらの紙製ハンガーは、紙をパウダー状にしたものに合成樹脂を混合して作る環境対応型の材料を使ったものなんです。耐久性はもちろん、焼却時の温室効果ガス排出量が、一般の樹脂と比べて約35%削減できるのもポイント。
五郎部:
こっちの竹製のハンガーもサステナブルなんですか?
片桐さん:
竹は、木材として加工できるまでに成長するのがかなり早く、水だけで育つため化学肥料や殺虫剤などを使わずに済みます。伐採しても新しい茎が伸び、木と同様CO2も吸収してくれるので、実はサステナブルな資源なんです。
軽くて丈夫で手触りが良いので、使い心地も良いんですよ。
五郎部:
まだまだ知らないことってたくさんありますね!
今後はどんな取り組みにチャレンジしていく予定なんでしょうか?
片桐さん:
設計段階からの廃棄物削減や、リユース、リサイクル素材を活用した空間づくりまで、引き続き広く取り組んでいく予定ではあるのですが、特に今着目しているのが「撤退工事」です。新しくオープンする店舗やオフィス、商業施設のテナントの入れ替わりに伴って撤退工事も多く請け負っていますので、その際の排出物の再生率を高める取り組みも行っていく予定です。
目指すところは「2030年には再生率70%」。サステナブルな空間づくりのために、つくるときも、壊すときのことも両輪で考え、廃棄のReduceに取り組んでいきたいと思っています。
五郎部:
今後の新たな取り組みにも注目していきます!本日はありがとうございました。
「つくるところから、壊すところまで。最初から最後まで責任をもつ」パールイデアさんの姿勢に心打たれ、マネキンのように背筋が伸びる五郎部。サステナブルに関する情報発信にもさらに責任を持って取り組みたいなと思いました!
自分なりのサステナブルからはじめよう
今回紹介した企業やプロダクト以外にも、たくさんのサステナブル関連の取り組みが見られた「第3回 サステナブル ファッション EXPO[秋]」。年々参加企業も増え、日本でのサステナブル意識の高まりや必要性を感じます。
ただ、わたしたちができる「サステナブル」はライフスタイルによってさまざま。環境をちょっと意識してモノを選んだり、使わなくなったものをリサイクルしたり、小さな心がけと行動だけでいいと思います。ぜひ少しずつでも日常に取り入れ、楽しみながらできることから始めてみてください。