【連載 vol.32】サステナブルなモノづくりの新たな基準!“Cradle to Cradle”とは
「クローゼットからはじまるサステナブル」では、「サステナビリティ×ファッション」をテーマに、決して難しくない、肩のチカラを抜いてサステナブルファッションを取り入れるヒントをエシカルコーディネータのエバンズ亜莉沙さんが紹介。今回はサーキュラーな考え方の“Cradle to Cradle”(ゆりかごからゆりかごへ)を紹介。
目次
“Cradle to Cradle” (ゆりかごからゆりかごへ)とは?
突然ですが、“Cradle to Cradle” (ゆりかごからゆりかごへ)というコンセプト、みなさん聞いたことがありますか?
前回の記事では、「サーキュラーエコノミー/循環型経済」について紹介しましたが、今回はまた更にファッションにも取り入れられている“Cradle to Cradle” というコンセプトに焦点を当ててみたいと思います。
前回記事も併せて読んでみてくださいね。
【連載 vol.31】最近話題の「サーキュラーエコノミー」とは?夏におすすめのサーキュラーアイテムも 「クローゼットからはじまるサステナブル」では、「サステナビリティ×ファッション」をテーマに、決して難しくない、肩のチカラを抜いてサステナブルファッションを取り入れるヒントをエシカルコーディネータのエバンズ亜莉沙さんが紹介。今回は最近話題の「サーキュラーエコノミー」を、その他のエコノミーとの違いやアイテムも交えて紹介。
“Cradle to Cradle”意味
Cradle to Cradleは、直訳すると「ゆりかごからゆりかごへ」。
イギリスが戦後、社会福祉政策として掲げていた「ゆりかごから墓場へ」(生まれてから死ぬまで、生涯にわたって国が社会福祉を提供しますよ)というスローガンをもじって生まれた言葉だそうで、「地球というゆりかごから得た資源をごみとして墓場(=廃棄場)に捨てるのではなく、ごみを資源と捉え、ゆりかご(=地球)にもどし、完全に循環するかたちにしよう」という意味を持ちます。
“Cradle to Cradle”歴史
このコンセプトは今から30年ほど前の1990年代、ドイツの科学者マイケル・ブラウンガートさん(Michael Braungart)と、米国の建築家・工業デザイナーのウィリアム・マクダナーさん(William McDonough)、EPEA(ドイツ環境保護促進機関)の科学者が作り上げ、提唱。
近年話題になっているサーキュラーエコノミーの原点ともされる考え方になっているそうなのです。
“Cradle to Cradle”特徴
Cradle to Cradle の考え方として特徴的なのは、
「デザインを考える初期段階から、 “ゴミが出ない形” を設計する」ということ。
従来のリニアな考えとは違い、最後に「捨てる」のではなく、「循環させる」にはどうしたら良いかを考えたデザイン設計をするということになります。
まさにサーキュラーな考え方!
Cradle to Cradle 認証とは?
Cradle to Cradleには認証制度があり、ドイツにあるEPEA(環境保護促進機関)が母体となっています。
認証を受ける為の5つの条件
企業が認証を受けるには、下記5つの条件がをクリアしている必要があります。
1.原材料の健康性:環境に配慮し、化学物質を出来るだけ使用していないこと
2.原料・部品のリユース:製品を使い終わった後は、部品を再利用したり、原料としてリサイクルすること
3.自然エネルギーの使用とカーボンマネジメント:生産においては再生可能エネルギーを利用し、温室効果ガス削減に取り組んでいること
4.水スチュワードシップ:生産過程において水を汚染しないこと
5.社会的な公正さ:原料調達から生産において、人や環境を尊重すること
どれもサステナブルな物づくりの上でとても重要な要素ですね。
また、さらに商品の生産プロセスにおいて、循環型サイクルをどれだけ取り入れているかによって、ベーシック・ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナの5段階に分けた審査が行われます。
Cradle to Cradle 認証で高ランクを取得している企業
そんなCradle to Cradle認証の中でも高いランクを取得している企業をいくつかご紹介!
Wolford(ウォルフォード)
オーストリア発祥のタイツや肌着で有名な、「Wolford(ウォルフォード)」。実は2019年にリユースできるタイツを仕立てる「オーロラコレクション」がテキスタイル業界で初となる「Cradle to Cradle 認証」ゴールドを獲得しました。
ウォルフォードが拠点を置くオーストリアは国土面積の約47%を森林が占め、自然を大切にする動きが活発であるといいます。そんなことも背景にあったのかもしれないですね。
また今後2025年までに商品の50%を「Cradle to Cradle 認証」へと切り替えていくことも表明しています。
こちらのアニメーションがわかりやすいのでよろしければみてみてください!
G-STAR RAW(ジースター・ロゥ)
Sustainable Jeans Ever」を通じて、世界で初めてCradle to Cradle ゴールドレベルの認証を取得したデニム生地を発表しています。素材は100%オーガニックコットンを原料とし、水の利用も抑え、有害な化学物質も一切使用せずに染色したものだそうです。
その後も、認証が生地だけにとどまらない製品も作り出し、ボタンや糸、ラベルを含む製品全体がCradle to Cradle Gold Level Certified™の認証を受けているものも販売。100%リサイクル可能な製品を発表するなど進化を続けています。
H&Mベビー
また、サステナビリティの進化が進んでいるのは大人服だけではありません。
スウェーデン発祥のファストファッションで有名なH&Mは、今年の春にH&Mベビーから発売される新生児向けの最新コレクションが、「Cradle to Cradle 認証」にてゴールドに認定されたことが発表になりました!
「本コレクションのアイテムはすべて、100%オーガニックコットンで作られており、調節可能なウエスト、折り返せるウエストバンドやカフスなど、新生児の成長に合わせてサイズを調節しながら長く使えるようなディテールを備えています。大切に着た後には兄弟姉妹や友人に譲るなどして長く愛用いただくことができ、さらに100%生分解性のある素材や顔料を使用していることから、何年にも渡って着古した後は、家庭用のコンポストで堆肥化することが可能」 とのこと。
その他ファッション以外の認証企業
その他ファッションブランド以外にも、AppleやAVEDA、さらには建築業界にも取り入れる企業が増えてきているこの完全循環型デザイン。
そんな様々なジャンルで持続可能な素材の有効活用が実践されてきていることは、とてもポジティブな変化だと感じますね。
今後の発展がますます楽しみです。