【リアルレポート:前編】サステナブルの“今”がわかる「サステナブルファッションEXPO(春)」
2023年4月5日(水)~7日(金) 東京ビッグサイトにて開催された「サステナブルファッションEXPO(春)」に、KOMERU編集長&副編集長が潜入レポート!注目の新たなブランドや、今話題の○○を使った素材など、あらゆる角度からサステナブルの“今”がわかる!このイベントの模様をダイジェストでお届け!
目次
そもそも、サステナブルファッションEXPOって?
サステナブル関連の商品が世界&全国から集結する日本最大級の展示会!
ファッション産業が与える環境負荷が世界的な問題となっている今、Z世代を中心とした若年層におけるサステナブルな取り組みやファッションアイテムへの関心が高まっています。特に最近では、廃棄される予定だったものがアップサイクルされ、新しいファッションアイテムとして新たな価値を生み出す事例も数多く出ています。今、注目のキーワードである、「#エコ」「#エシカル」「#リサイクル」といったサステナブル関連のアイテム1万2000点以上が世界各国から集結するクリエイティブショーケース!それが今回のEXPOなんです。
今回レポートするのはこのふたり
写真右:KÓMERU編集長 坊所萩子 (以下、坊所)
写真左:副編集長 五郎部 怜(以下、五郎部)
偶然にも白×デニムというお揃いファッションで現れた、息ピッタリの2人。「今回は注目のブースがたくさんありすぎる!」と、2人揃って歩きやすいスニーカー&リュックで参戦と、気合も十分です。
Report01:もったいないからのスタート『COME SACK』で衰退する米袋を進化させ後世に残す
坊所:
ここは名前の「コメ」繋がりってこともあり、注目してた企業さんなんですよね。
五郎部:
実は私も!見た目もすごくスタイリッシュなアイテムなので、KÓMERUと「コメ」コラボで何かできるかもしれないと期待です!
早速お話をお伺いしたのは、北日本製袋株式會社 坊屋鋪孝司さん
坊屋鋪さん:
おふたりはお米を運ぶ際に使われている樹脂袋を知っていますか?耐久性に優れていて、お米の運搬だけでなく、災害時の土囊袋にも使用され、海外では一般的に使われているのですが、日本では他の素材に押されていて、樹脂袋へのニーズは激減しているんです。
五郎部:
確かに最近は米袋って、紙製とかビニール製ですもんね。
坊屋鋪さん:
そうなんです、樹脂製の米袋を作る機械はサーキュラー機(円織り機)というのですが、この米袋を一貫製造できる機械を持っている企業は、私たち岩手県矢巾町にあるうちが最後の一社となってしまいました……。
ふたり:
えぇ!かなりのピンチ的状況ですね。
坊屋鋪さん:
そこで、この日本唯一の機械を守りたいという想いから、開発したのがこの『COME SACK(カムサック)』という商品です。機械というのはメンテナンスも必要なので、動かしてないといけない。機械を止めることなく、動かし続けるにはどうすればいいのか?と考えた末に誕生しました。
坊所:
別の商品を生み出して新たな需要を生み、貴重な機械を活用できるようにしたんですね。
坊屋鋪さん:
そうなんです、クラウドファンディングも利用し、ありがたいことに多くのご支援を頂いて目標金額を大きく上回る金額を達成することができました。
坊所:
すごい!ただ、この日本唯一の貴重な機械を活用して製品を作るとはいえ、正直ほしくなるものかどうか?ビジュアルや使い心地の良し悪しも大事になってきますよね?
坊屋鋪さん:
そこはすごく大事な部分だと思っていたので、地元出身のファッションデザイナーに依頼し、すごくファッショナブルなデザインに仕上げました。
目を引くオシャレなビジュアルを支えたのは、地元出身・敏腕デザイナーの存在
ブランディング・ビジュアルを担当したファッションデザイナー、ササキハルキさん
五郎部:
なぜこのプロジェクトに参加されたんでしょうか?
ササキさん:
長年ファッションデザインをしてきたので、かなりたくさんの生地屋さんを見てきたのですが、初めてこの樹脂の米袋をつくる機械を見たときに、純粋にカッコいい!って思ったんです。糸が両方から流れて1つの筒になって出てくる、サーキュラー機独特のカッコよさは絶対に残したいって思いましたね。
五郎部:
確かにすごくかっこいい機械です!作られたプロダクトも全部スタイリッシュだし使いやすそうですね。
ササキさん:
デザインにこだわっただけでなく、大量のお米を運べるくらいなので、軽くて薄いのに30kg以上持ち運び可能な強度もポイント。あとはよく見ると分かるのですが、味のある素材感やハンコプリントもどこかレトロであたたかみを感じていただけると思います。
坊所:
軽くて丈夫って最高ですね。旅行やアウトドア、エコバッグとしても使えそう!
五郎部:
プリントに隠れ米感があったり、細かい部分にまで、配慮されたデザインにもぐっときますね。今後はまた新たな展開な
どあるんでしょうか?
ササキさん:
私たちは、まだまだスタートしたばかりのプロジェクトではありますが、今後はお米そのものを素材にした製品もやってみたいですね。今、古米や食用に向かないお米が大量に余ってしまっているため、素材としての可能性も探っていきたいと思っています。
「既に完成されたクオリティ。このままコラボバッグとしていけそう……。」厳しい目が光る編集長坊所。近々「コメ」コラボがありえるかも。
Report02:「生まれ変わるカシミヤ」高品質プロダクトにこだわり続ける『Felice regalo(フェリーチェ・レガーロ)』
坊所:
次にお伺いするのは、カシミヤ100%にこだわったサステナブルブランドの『Felice regalo』さんです。
五郎部:
何となくの想像ですが、カシミヤのみにこだわると品質管理などがとっても大変そうですよね……。
坊所:
確かに。その辺もいろいろ聞いてみましょう。
こちらでお話をお聞きしたのは、ブランドマネージャー 伊藤智美さん
ふたり:
どうぞよろしくお願いいたします!早速ですが御社のブランド『Felice regal(フェリーチェ・レガーロ)』のお取り組み内容を教えてください。
伊藤さん:
「カシミヤという貴重な天然繊維を大切にしたい」という想いと「新たに資源を無駄にしない」観点から、始まったのがこの「生まれ変わるカシミヤ」プロジェクトです。社内外問わず、より多くのカシミヤ製品の廃棄物量を削減し、リサイクルによる再利用を進めることで、半永久的なリサイクルが可能となり、資源が循環するサーキュラーエコノミーの実現を可能にする取り組みになります。
坊所:
特にこのリサイクルの資源をカシミヤ100%にこだわったということですが、高品質にこだわりすぎるとリサイクルが大変ではないですか?
伊藤さん:
そうなんです。こだわりすぎてしまったことで逃げ場がない状況ではあります(汗)。ただ、社内での話し合いの中で「苦労するかもしれないけど品質にはこだわりたい」「他の素材を混ぜたりせず、純粋なカシミヤだけでいきたい」との声が多く、大変でもやり切ろうと決断しました。
坊所:
どうしてそこまでこだわったんでしょうか?
伊藤さん:
やはりカシミヤが非常に優れた素材であるためですね。非常に軽量でありながらも暖かく、通気性も良く、肌触りも非常に良い素材です。さらに見た目にも美しく柔らかく、上品な光沢がエレガント。防寒面にフォーカスされがちな素材なのですが、ファッションとしての魅力をもっとアピールしていきたいという想いもありました。
五郎部:
このリサイクル資源となるカシミヤはどうやって集めているんですか?
伊藤さん:
まずは協力工場から出た規格外製品や繊維廃棄物に加え、不要となったカシミヤ100%の製品を回収。裁断・粉砕・反毛・バージンカシミヤとブレンド・紡績して再生糸を作ります。
現在カシミヤの選別には厳格な基準を設けられており、高品質かつ持続可能な原料のみを使用。その糸から新たなカシミヤ製品を製造することで廃棄物の量を削減するだけでなく、半永久的にカシミヤのリサイクルが可能となる資源が循環しています。
伊藤さん:
カシミヤ製品の回収については、当社のホームページやインスタグラムからの発信、直営店での回収、全国の百貨店様やイベント等へ参加の際にカシミヤ製品回収ボックスを設置することにより、社内外製品問わず、多くの方がリサイクルに参加できるよう、活動の輪を広げています。
このような取り組みによって、高品質な製品を提供することができます。そのため大変ではありますが、カシミヤ100%にこだわることは『Felice regalo(フェリーチェ・レガーロ)』にとっても非常に重要なポイントとなっています。
坊所:
素敵なアイテムをたくさん展開されている『Felice regalo(フェリーチェ・レガーロ)』さんならではのこだわりと苦労。ファッションアイテムとしては、品質って大事な部分ですから、長く使えてさらにリサイクルもしやすいのは素敵!今後も注目していきたいブランドです。本日はありがとうございました。
「いい素材って気持ちいいですねぇ~」「癒やしでしかないね……。」上質な素材に触れ、日頃の疲れを癒すふたり。
Report03:苦節30年「時代がやっと追いついた…」サステナブルの先駆『エコログ・リサイクリング・ジャパン』
坊所:
こちらは1994年からずっとリサイクル事業に取り組んできた企業みたい。
五郎部:
1994年って約30年も前じゃないですか!その頃ってサステナブルというかリサイクルに対する意識も今とは段違いですよね。
坊所:
サステナブルって何?って時代だったと思う……想像しただけで大変そう。その辺のリアルなお話も聞いてみましょう。
五郎部:
御社が取り組まれている、マテリアルリサイクルってどんな方法でしょうか?
田邉さん:
簡単に言うと、廃棄物を原材料として再利用するリサイクル方法ですが、素材そのものを再利用する手法であるため、循環型社会の実現を目指せるのが特徴です。リサイクルの中でも最もCO2の排出量が削減できる方法なのも大きな利点。例えば、弊社の取り組みで言うと「企業で不要となった古いユニフォームなどを回収し、再商品化したものを回収元の企業に戻す」というリサイクルもその一つです。
五郎部:
古いユニフォームから、新たに何が作られますか?
田邉さん:
作られる商品は、エコバッグやタオル、手袋などさまざまありますが、回収元の企業で使われるほか、お客様へのノベルティにも活用されています。
田邉さん:
もちろんそれだけでなく、回収した衣類品をリサイクルしてできた原料から、さまざまな再成型品を作ることもできます。例えばこのジャケットはボタンもリサイクルされたもの。ボタンのほかにもファスナーや中綿、芯地なども作ることができるので、さらにリサイクルする際に、取り外す工程も廃棄する部分もなくなりますよね。
五郎部:
なるほど!リサイクルできない部分がない服ってことなんですね!
坊所:
最初から「リサイクルしやすい」服を作っておけば、更に再製品化するときにも、手間やコストがかからないですね。
田邉さん:
そうなんです。現在は環境汚染要因とも言われているファッション産業ですが、資源の回収や再利用を前提とした、このサーキュラー(循環)型の経済システムへとシフトさせることで、持続可能な業界の確立を目指せると信じています。
坊所:
御社は1994年からこのリサイクル事業に取り組んできたとのことですが、その頃って今とは環境や人々の意識レベルも違いますよね?
田邉さん:
はい。正直当時はまだ今ほど企業の環境意識も高くはなかったですから、リサイクルしている会社どころか、検討している会社もほとんどありませんでした。「良い取り組みだが、ビジネスにはならないよ」という反応が多くて、苦難続き。ただ設立当初の想いである「メーカー責任として、自分たちが生産した製品を最後まで面倒を見るべき時代がくる」という強いでやり続けて良かったと思います。どこかでやめてたら今のこの状況はありませんから。
坊所:
時代を先取りしすぎたというか、今やっと時代が追いついてきた!という感じですが、今後新たに考えている動きなどはありますか?
田邉さん:
これからも新たなリサイクルニーズに応えるべく、常に挑戦し続けていきたいと思います。最近だと、一般衣料品の回収リサイクルも量販店の店舗でスタートし、リサイクル対象も年々拡大。繊維だけではなく、他の産業資材に関しても要望にお応えすべく、設備整備・技術開発に注力し、オンリーワン企業を目指していきたいと思っています。
五郎部:
今後も引き続き、時代を先取りしていきそうですね。
(「創業した1994年って何歳の時だろう……」「そもそも生まれてたかな?」)自分たちがサステナブルに関わる以前から取り組みをしていた企業さんの歴史を感じながら、リサイクル資材を眺めるふたり。
編集長 坊所‘EYE
前半インタビューさせていただいた北日本製袋株式會社様、Felice regalo様、エコログ・リサイクリング・ジャパン様、三者三様のサステナブルとの関わり方を感じる事ができました。
共通していることは、どの企業の方も信念、こだわり、熱い想いを持って取り組まれていた事です。お話いただいた方が皆様いきいきと話されている姿がとても印象的でした。
何か製品を購入する際、環境に配慮された製品という所はもちろん1つの判断材料にはなりえますが、デザインが良くて、使いたい!と思える事が重要なポイントだと思います。
どの企業様も品質、デザインにおいてもこだわりを持たれていて素敵なデザインが多く、「これ、個人的に欲しい!」発言を連発してしまいました 笑
何か購入する際、その製品が生まれたストーリーを考えながら選ぶというのも素敵ですよね。
【リアルレポート:後編】みどころ紹介
次号「サステナブルファッションEXPO(春)」レポート後半は、年間8,000万本も捨てられる(!)というビニール傘を使ったオシャレバッグブランド、コーヒー豆のカス(!?)を使った驚きの防水スニーカーなど、さらに注目のブースをレポートしていきます!お楽しみに。