ポリ塩化ビニル(PVC)とは?環境への影響や長く使うためのお手入れ方法を紹介
ポリ塩化ビニルとはPVCとも表記される合成樹脂の一つです。ファッション業界では主にバッグや靴、雑貨などに取り入れられています。その他にも幅広い分野で使用されており、非常に使い勝手の良い物質です。本記事では、ポリ塩化ビニルの特徴や環境に与える影響、処理方法の他、長く使うためのお手入れ方法を解説します。
目次
ポリ塩化ビニルとは
ポリ塩化ビニルとは、PVCとも呼ばれる合成樹脂の一種です。水道管のパイプや資材、家電やファッション雑貨など、幅広い分野で使用されている素材で、メリットも多くあります。まずは、ポリ塩化ビニルの特徴や用途、メリットやデメリットを見ていきましょう。
ポリ塩化ビニルの特徴
ポリ塩化ビニルは合成樹脂の一つで、塩化ビニルを重合したものを指します。重合とは、モノマー(単量体)、ポリマー(重合体)と呼ばれる物質を反応させて繋ぎ合わせ、目的となるポリマーを作る化学反応です。塩ビ、PVCと呼ばれることもあります。また、軟質なポリ塩化ビニルはソフトビニールと呼ばれる場合も。
日常で名前を見る機会は少ないかもしれませんが、ポリ塩化ビニルを使用した製品は私達の身近にたくさん存在しています。
ポリ塩化ビニルの用途
ポリ塩化ビニルは私達の周りで、さまざまな形で利用されています。例えば、上下水道のパイプや電力線といった生活に密接に関わるもの。他には、壁や窓枠などの建築用の資材や農業、工業用の資材、医療用の機材等です。自動車や家電のパーツにもよく見られます。
文房具や食品の容器にも使用されているため、小さなものから大きなものまで用途は非常に幅広いです。ファッションでも取り入れられており、特に夏場はクリアバッグ、PVCバッグという名称でポリ塩化ビニルを使用したバッグが人気です。
ポリ塩化ビニルのメリット
先述したように、ポリ塩化ビニルは幅広い用途で利用されています。これほどまでに用いられる理由は、メリットが多いからと言えるでしょう。
大きな特徴は、軽くて耐久性が高いことです。耐久力は、アルミと同程度とも言われています。サビや腐食がなく、水濡れに強いのもポイント。さらに、塩化ビニルは絶縁性があり電気にも強いです。この特性から、電力線として使用されます。また、パイプなどによく用いられるのは、摩擦が少ない特性を利用しています。
そして最も大きなメリットは、コストが安い点です。安価で丈夫なため、ポリ塩化ビニルは幅広い用途で使われます。
ポリ塩化ビニルのデメリット
メリットが多いポリ塩化ビニルですが、デメリットもあります。大きな特徴は、高温で変形したり低温で割れたりと温度変化に弱いことです。また、シンナーやアセトンなどの有機溶剤で溶けてしまうため、ポリ塩化ビニルに付着しないように注意してください。
ポリ塩化ビニルは比較的耐久性に優れていますが、傷があるとそこから割れやすくなります。そのため、パイプなどに傷がないか定期的に確認する必要があります。
ポリ塩化ビニルの環境への影響は?
以前は、ポリ塩化ビニルは焼却の際にダイオキシンが発生するとして問題となっていました。現在では、技術の向上により問題は解決されています。ここからは、ポリ塩化ビニルが環境に与える影響について説明します。
ダイオキシン問題は解消
ポリ塩化ビニルは焼却の際にダイオキシンを発生させるとして、1990年代に大きな問題となりました。問題が取り上げられてから、一時はポリ塩化ビニルの生産量は減少。しかしその後の研究で、ダイオキシンが発生するのは塩素と芳香族化合物を含んだ廃棄物を焼却する際の不完全燃焼によるものと解明されてから流れが変わりました。
ダイオキシンの発生原因が分かったことで、不完全燃焼を防ぐために焼却炉の性能を向上させ、塩素を含んだゴミを焼却しないといった対策がとれるようになりました。
現在では、ポリ塩化ビニルの焼却におけるダイオキシン発生問題は解決されたと言えるでしょう。
二酸化炭素排出量は少ない
廃棄物を処分する際に発生する二酸化炭素は、地球温暖化の原因として懸念されています。ポリ塩化ビニルは、重量の比率の約半分が塩素です。他の石油系プラスチックと比較すると石油消費量も少ないため、二酸化炭素の排出量は少ないと考えられるでしょう。ポリ塩化ビニルは環境への影響も小さいと言えます。
ポリ塩化ビニルの処理と再利用
産業廃棄物のポリ塩化ビニルは中間処理施設に送られた後、破砕され半分のものが再生製品の原料になります。ここからは、ポリ塩化ビニルのリサイクル方法を説明します。
エネルギーリカバリー
エネルギーリカバリーとは、プラスチックを含む廃棄物を燃料などのエネルギー源として再利用することです。エネルギーリカバリーをするためには廃棄物の安定的な処理、焼却能力が必要となるのがポイント。以前はダイオキシン問題が取り上げられたポリ塩化ビニルですが、現在では焼却炉の性能向上により問題なく処理が行えます。ポリ塩化ビニルを焼却、エネルギーリカバリーできる施設は現在では全国に存在するのです。
マテリアルリサイクル
廃棄物を再び資源として利用することを、マテリアルリサイクルと言います。ポリ塩化ビニルは再資源化するための施設に送られる前に、中間施設で破砕処理されるのが特徴です。再資源化の工程では、さまざまな分離技術が使用されます。
パイプを粉砕し、再成形してパイプにしたり、壁紙を粉砕、分離して成型材料にしたりなどリサイクルの形はさまざま。他のプラスチックに比べてポリ塩化ビニルは、マテリアルリサイクルが容易なため積極的に行われています。
フィードストック(ケミカル)リサイクル
他の素材を含んでいたり、劣化が激しかったりするポリ塩化ビニルも、リサイクルが可能です。処理や分離技術の進歩により、さまざまな形に変わって再利用されています。
高温処理で塩酸と炭化物に分離させる高炉原料化技術を用いれば、酸洗用の薬剤や還元剤としてポリ塩化ビニルの再利用が可能。破砕や異物除去などさまざまな工程を経てコークス炉に投入されるコークス炉化学原料化技術では、最終的に石炭と混ぜてポリ塩化ビニルを100%再利用できます。
酸素とスチームで部分酸化させるガス化技術では、水素や一酸化炭素などの合成ガスを生成可能です。
空気を遮断して酸素のない状態で熱を加える油化技術では、ポリ塩化ビニルがガスや油、炭化物に転換されます。
多様な再利用技術により、現在ではポリ塩化ビニルは循環して利用できる資源と言えるようになりました。
ポリ塩化ビニル製品を長く使うために
ポリ塩化ビニルは身近なところで、さまざまな使われ方をしています。長く大切にポリ塩化ビニル製品を使うことは、何よりサステナブルで環境に対しての配慮につながると言えるでしょう。ここからは、ポリ塩化ビニル製品を長く使うコツを紹介します。
やわらかい布で拭き取る
バッグやサンダルなど、体に触れる機会の多いポリ塩化ビニル製品は皮脂が付きやすくなります。皮脂は汚れの元となってしまうので、使用後は乾いたやわらかい布で拭き取るようにしましょう。ブラシなどでホコリを落とすのもおすすめです。
ポリ塩化ビニルは水に強い素材ですが、濡れてしまった場合はなるべく早く拭き取って乾かすようにしてください。放置してしまうと、シミができる恐れがあります。
中性洗剤で汚れを落とす
汚れてしまった場合は、中性洗剤を使用してみましょう。ぬるま湯で薄めた中性洗剤を布に付け、汚れを拭き取ります。その後、中性洗剤を落とすようにもう一度水拭きをしてみてください。最後に乾いた布で拭き取って乾かせば、クリーニングの完了です。
高温に注意する
ポリ塩化ビニルは水には強いですが、高温には弱いです。夏場の直射日光や冬の暖房器具に注意しましょう。熱により、変形や劣化の恐れがあります。
ポリ塩化ビニル製品を大切に扱おう
ポリ塩化ビニルの環境への影響は、以前は問題となりましたが、今では焼却炉の性能など技術の向上により解決されたと考えられています。現在でもリサイクルが積極的に行われていますが、さらに再利用の幅が広がるかもしれません。リサイクル技術が向上したとしても、安易に捨ててずに大切に長く扱うのが何よりも環境の配慮につながるでしょう。ぜひ、身近なポリ塩化ビニル製品をチェックしてみてください。