【連載 vol.39】ファストファッションのサステナブルな取り組み
「クローゼットからはじまるサステナブル」では、「サステナビリティ×ファッション」をテーマに、決して難しくない、肩のチカラを抜いてサステナブルファッションを取り入れるヒントをエシカルコーディネーターのエバンズ亜莉沙さんが紹介。今回は ファッション業界の課題と変化について主にファストファッションにフォーカスしていきます。
ファストファッション業界とサステナブル
ファッション業界の中にも様々なビジネスモデルがある中で、今回注目したいのは「ファストファッションとその持続可能性」について。
多くの課題が指摘されている分野ではありますが、近年では “環境に配慮した取り組み” も打ち出しているブランドも増えています。しかし、実際はどれほどサステナブルなものなのでしょうか。
一言で「◯」「×」とはなかなか定義できない議論かと思いますが、今回はファストファッション業界のサステナブルな取り組みについて、皆さんと一緒に考えてみたいと思います!
数字で見るファッション業界の変遷
まずは、ファッション業界における数字の変化をみてみましょう。
1990年代に11.9億着だった服の国内供給数量は、2018年には国内生産と海外からの輸入を合わせ29億着の服が日本で調達されるようになったと言われています。
過去30年あまりで約3倍にも膨れ上がっているということに・・!
不思議なのが、消費数量をみてみると、1990年代は11.5億着、2018年は13.5億着と、ほぼ横這いなのでそれほど変わりがありません。
ここからわかるのは、『たくさん作られているが、あまり買われていない』ということ。つまり、生産する側で大量に廃棄が出ているということですね。
企業としては、生産量を増やすことで、売り逃しによる機会ロスを低減できます。また、安い価格を実現するために、必要量以上に生産する事でコストを下げています。
そのため、生産した服の半分ほどは売れ残り、廃棄になってしまうようです。
ただし、企業だけが悪者というわけではありません。
ファストファッションの台頭で、アメリカでは被服費が 1950 年代には年収の10% だったのに対し、現在は3%まで低下。
また、日本でも「衣服 1枚あたりの価格」が、1990 年の6,846 円から2019 年には3,202 円にまで下がっているようです。
消費者側も安い服を選ぶことで、知らずのうちに様々な課題に加担してしまっているのはショックなことですね。
ファッション業界の課題とサステナブルファッション
続いて、特にファストファッションが抱える課題と解決に向けた動きを見ていきます。
ファッションは、私たちにワクワク感を与えてくれます。しかし、その業界は長年にわたり地球環境に負担をかけてきたと言われています。その為、政府や企業、消費者として真摯に向き合うべき問題とされています。
特に「ファストファッション」は、安価な値段で手に入れられるメリットもありますが、その裏では、大量生産が起き結果的に大量廃棄が起きてます。また、生産工程での環境汚染や労働者の低賃金、人権問題も大きな課題となっています。
そこでこのような課題解決に向けて出てきたのが、本連載の全体テーマでもある「サステナブルファッション」※1。
「サステナブルファッション」には、天然素材の利用、循環的生産方法、フェアトレード、リユースや古着も含まれます。
※1サステナブルファッション:
衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組みのことを言います。
ファストファッション業界の変化
現在、大手ファストファッションブランドも “サステナブル” を謳うラインを発表し、環境に配慮したものづくりや新しいビジネスモデルにも着手し始めています。
例えば、リサイクルペットボトルやオーガニックコットンなどを素材の一部に取り入れたり、衣類回収ボックスを店頭に設置したりなどを行っています。環境に配慮したものづくりや、新しいビジネスモデルにも着手し始めているのです。
近年では消費者の多くが環境への配慮などの意識も高まり、新たな服を生み出すことなく循環させる古着市場が急成長を見せています。これはとても喜ばしいことですね!
そして、ファストファッションブランドもそんな古着市場に参入し始めていることを、みなさんご存知でしょうか。
素晴らしい!と思う反面、実はそうではない一面も・・・
次回の記事で、さらに詳しくこのファストファッション業界で起きている変化とそのサステナビリティについて追求していきたいと思います。